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頑丈なリアム

―学校 夜―

「――あの時、立ち入り禁止の場所に俺だけが行った訳だけど……タミには一体何があったの? 何かあったから、しばらく学校に来なかったんだよね?」


 リアムは微笑んだまま、そう言った。


「それは……」


 何をどう伝えればいいのか、僕しか知らない情報は一体何だろうか、そんなことを考えながら僕は地面に目を落とす。


「俺はね、そこで事件の犯人と女の子に会ったよ。犯人のライオンには口に入れられて食べられかけたけど……俺は食べ物じゃないからね、無事だったよ。タミにも何かあったから、しばらく来なかったんだよね?」


 事件の犯人のライオンが僕で、女の子がクロエ、それは間違いないだろう。力を暴走させたことで体が長い休養を求めた結果、一週間も眠る羽目になった。そんなことを直接言える訳がない。


「だから、行っちゃ駄目だって言ったのに……」

「でも、行かなくても結果として大変な目に遭うことになった訳でしょ? タミが一週間も来なかったことを考えると、その場にいた時の方がもっと酷い目にあってるってことじゃないの? 俺は怪我なんてしなかったから、もう次の日から学校に行ったしね」

「怪我を……しなかったのか!? 口に入れられたのに!?」


 僕は顔を上げて、リアムを見た。確かに怪我一つない。口に入れられてしまったというのに、怪我一つないのは一体どういうことなのだろう。顔に掠り傷一つ残ってなどいない、体にも怪我の跡はない。一週間ちょっとしか経過していないのに、傷が全て完治するというのはおかしな話ではないか。

 

「しなかったよ。俺、結構頑丈な体なんだ~! この世界の誰よりもね」

「いやいや……そういう問題? それ」


(まさか……僕が一週間眠る原因になったのが、実はそれだったとしたらどうしよう。暴走させて体を疲れさせてしまったことよりも、リアムを噛んでも丈夫過ぎてその反動で……とかだったら地味に傷付くな。いや、こんなことを考えている場合じゃない。どうして、中に入らなかった僕が一週間近く休んでいたのかということを考えなければ……!)


 考えれば考えるほど、頭の中は混乱していく。元々、嘘を考えることは得意じゃないのだ。しかも、早急にその嘘が必要という場面だからこそ何も浮かばない。


「タミはそうじゃないから、あんなに休んでたんでしょ?」

「え、えっと……」


(何か、何か! どうしよう!)


 リアムは僕の方を見るのをやめて、前を向いて再び口を開く。


「俺の所に来るまでに、タミの所に行ったってことなのかな? ねぇ、そうなの? 君も女の子に助けて貰った……」


 突然、リアムが固まった。まだ、何かを言葉を紡ごうと口を動かしていたから何か不自然だと感じた。リアムの視線の先に何かあったことが原因かと思い、僕もその視線の先を辿った。

 すると、そこには――。


「あの女の子だ……ねぇ、タミ。俺はあの子に助けて貰ったんだよ!」

「クロエ……」


 クロエがいた。水曜の夜以降、一言も言葉を交わしていないクロエが。

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