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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十四章 白烏
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似た者同士

―N.N. ホテル屋上 夜―

「――え、じゃあ、そのままハンマーで親……いや、そいつらをぼっこぼっこにしちまったのか?」


 ゴンザレス君は、不快感を滲ませながら問いかけてきた。


「まさか、そんなことは出来なかったよ。そもそも、知らなかったんだ。ハンマーが人を殺せる道具だってことを」

「じゃあ、もし知っていたのなら……貴方は……」

「いや、出来なかっただろう。自分は臆病で弱いから」


 自分は、この手をほとんど汚さずに生きてきた。怖いから、何かと理由をつけて組織の者達に押し付けた。肝心な相手を殺すのは、いつも他の誰か。アレスの時だって――。


「臆病? ここまでのことをやってのけた奴が? 臆病なくせにゃ、大胆だな」

「集まった者達が優秀だったから。勢いで出来たんだ。特に、今の世代の子達は……未知なる力を持っているだけあってね。よくあるだろう、お飾りの王って。周りが優秀だから、たまたま上手く出来ているだけのことって。自分一人じゃ……何も出来なかった」


 そんな彼らに、自分が出来たことと言えば、最初の望みを叶えてあげることだけ。その為の準備を整え、与えてきた。もし、彼らが心変わりしてしまったら――何も成せない。幸福な死を望みながら、直前になって死を恐れてしまう者達のことは予測出来た。命があり、心がある以上当然のこと。

 だが、そうではなく――ごくまれに彼らにイレギュラーが作用し、誰かの為に命を投げ出す者も現れた。その時は、ただ涙を流すしかなかった。


「こりゃ、たまげたな。なんか、なんかさ……お前ら似た者同士じゃね?」


 彼は薄ら笑いを浮かべ、巽君と自分の顔を見比べる。そこで、気が付いた。巽君が眉間にしわを寄せて、俯いていることに。


(気分でも悪くなっちゃったかな)


「自己評価えぐ低い所とか、周りへの劣等感とか」

「……だってさ、巽君」


 一応呼びかけてみたものの、巽君はそれに応じることはなかった。


(聞く気もないか、理解する気もなくなったかな)


 彼は、自分を理解したいと言った。けれど、それは簡単なことじゃない。大人に出来ないこと、それは子供だから出来るのだ。何もしがらみがないから。


「こいつ、会話のキャッチボール苦手だからよ。あ、知ってるか。で、話の続きはまだあるよな。俺が逸らしちまったけど、続き教えてくれねぇか。殺さなかった後、お前に何が起こってどうなったのか」

「聞く価値は、あるか――」

「あります。だから、聞かせて下さい。貴方が、今に至った理由を……僕は知りたい」


 巽君が食い気味に口を開く。あんな顔もしていたし、興味を失っていたものと思ったが。


「あれ、そう? 嫌そうな顔してたから、まさか君から求めてくるなんて意外だな」

「え? あぁ、ちょっと頭の中を整理してて……さっきは、そんなに重要そうな会話をしてなかったので」


 一切、悪気を感じない表情だ。ゴンザレス君はかなり睨みを利かせているが、それにも気付いていないようだ。偏ったコミュニケーションで過ごした幼少期、毒気の多い性分故のことだろう。


「フフフ……そうだね、今の君の中に新たに情報を入れるのは、大変だろうね。じゃあ、整理も終わったようだし……話の続きといこうか」

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