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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十三章 これから先へ
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俺を信じて

―ゴンザレス ホテル 夜―

 穴を出ると、そこはベランダらしき場所だった。やはり、外側は損壊は激しくない。建物として機能しているようだ。


(絶対に、周囲を巻き込まねぇという強い意思を感じるぜ……)


 外には出られたが、問題はここからだ。魔力を封じ込めるものが、外にまで及んでいたら――俺は、このベランダを伝っていかなければならなくなる。距離はあるし、めぼしい突起物も少ない。超ハードモード、ロッククライミングだ。

 もう走り疲れたし、腕も痛い。これ以上のことは、なるべくならしたくない。これで駄目だったら、心が真っ二つだ。


(どうか、目を開けたら……屋上でありますように!)


 心をはらはらさせながら、目を閉じて念じる。その刹那、体が浮く感覚を覚えた。


「来たっ!」


 目を開けると、景色は様変わりしていた。周りは柵に囲まれて、月明かりを独り占めしている空間。そして、上空にある二つの人影。間違いない、ここはホテルの屋上だ。俺の予想は当たっていたし、瞬間移動も成功した。


「……危険じゃよ、ここにおっては」


 突然、背後から声をかけられた。振り返ると、そこには一人のじいさんがいた。こんな場所にいるのには、かなり不釣り合いな人物。

 しかし、そのじいさんから感じるのは強大な力。老いるにつれて、人は魔力を失っていく。この世界において、老衰とは魔力の完全消失によって引き起こされるという。このじいさんは、見た目から判断すれば八十代後半くらい。失礼かもしれないが、年相応のものではない。

 それに例外があるとすれば、人でないということだ。


「そんなこと知ってるぜ。危険なら、いくらでも背負える」

「そうか、たくましいことじゃ」

「で……じいさんは、なんでここにいんだよ」

「ここにおれと言われておったからの。しかし、突然……支配がなくなった。今しがた、ここを去ろうとしておった所じゃ。もう理由もないしの。そこに、お前さんが来たんじゃよ」

「はぁ……支配?」


 どうやら、じいさんは自ら望んでここにいた訳ではないらしい。支配というのは、洗脳かその類だろうか。


「ふふ、理解してもしょうがないことじゃろう。それより、急いでおるんじゃろう。声をかけてすまんかったの。じゃあの」


 あまり深くは語りたくない様子で、愛想笑いを浮かべる。


「おい、ちょ――」


 そして、俺の疑問を解決することなく、空気に溶けるように姿を消した。


「瞬間移動ともまた違う。人間じゃねぇのは、明らかだが……とりあえず、今は――」


 これに関しては、巽の方が詳しいだろう。後で聞けば分かること。俺は気持ちを切り替え、上空に再び視線を向ける。そして、二人の下へと急いだ。

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