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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十二章 最終決戦
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隕石と同じくらい

―ホテル屋上 夜―

 相当にショックを受けたようで、ジャンヌの気配が消えていく。そして、その後に残ったのは強い怒りのオーラ。それは放つのは、本来の体の所有者であるN.N.であった。


「……ウザい、ウザい。自分の思念にまで影響を与えてきたのは、こんな終わったことの為かぁ。もうない世界のことを、ああだこうだ言ってもしょうがないのにね。しかも、過去にそれを正せなかったのは実力不足じゃんか。それを引きずって、こっちにまで押し付けてくるとか本当迷惑だよ。まぁ、いいか。ちょっと大人しくなったし、体ももう自由に動かせる。大したことのない怒りだよね。あっさりと言い負けてさ。また奪われてしまったら、たまらないし……もっと頑張ろ」


 体のあちこちを鳴らし、薄ら笑いを浮かべながら彼は言う。


(まずい、まだ戦うつもりだ! ナギムに押し付ける訳には――)


「大丈夫だよ。体を借りたお礼に、僕がどうにかしよう。まぁ、結局体を借りなくてはいけないんだけど。情けないなぁ、アハハ……」


 僕の声に、彼は気恥ずかしそうに頭を掻いて答える。


「同罪だよ、お前もさぁ。偉そうに色々言ってたけど。元凶は、お前じゃないか。この世界の価値も、構造を根本から変えるきっかけになった」

「……そうだね」

「全部肯定すればいいって思ってる? あぁ、気に食わない。あぁ、イライラする。絶対にこの世界は終わらせるんだ。色々出てきたけど、もう気絶させれば黙るよね? 考えることが億劫になってきたよ」

「否定することが出来ないから……」

「あぁ、そうかい! どうでもいいけどね」


 そう言って、彼は翼を広げて空高く舞い上がる。そして、その身を炎にまとわせる。遠く離れているはずなのに、その熱さが伝わる。こんな僕にでも、何をしようとしているのか分かった。


(そんなことをしたら、流石にホテルが壊れる! いくら、イザベラさんが制御しているとはいえ……そうなったら、周りにだって影響が! ゴンザレスがどこまでやってくれているか分からないし、犠牲者が出てもおかしくない! 僕は気絶し、破壊の龍をまた呼び起こされてしまう。何もかもが最悪だ。どうしよう!?)


「うん……あんなのが落ちてきたら、ひとたまりもないね。君の体は、怪我を負わない訳ではないし……隕石くらいの衝撃があるかもしれないな」


(隕石?)


 聞き慣れない言葉に、僕は疑問を抱いた。


「あぁ……そうか、作り直された世界はそこまで及んでいないのか」


(一体、どういう――)


「ここは、最善の策を取ろう。彼は死なないし、怪我の治癒も常人を超えている。心は痛むけど、しょうがない……」


 焦る僕とは対照的に、彼は冷静だった。生きていた頃の世界の知識のお陰か、状況を見て、今取るべき手段を導き出した。彼は置いていた剣を、手に取る。すると、剣が太陽のように再び輝き始めた。


「行っておいで、勝利の剣」


 彼は、手を開く。すると、剣はひとりでに飛び立ち――真っ赤な炎に包まれているN.N.に真っ直ぐに向かっていった。そして、胸部を貫いた。


「あれぇ? 勝利を求めないんじゃなかったのかなぁ! くっ……アハハ、抜けないよ。これ。まるで、目の前に人がいるみたいに強い力で押されてるよ! 押し戻される……ハハハ! 予想外にも程がある! 不快だけど、嬉しいなぁ!」


 刺され続けている人のテンションではない。しかも、柄を持って引き抜こうとしている。おぞましい。


「勝利だけじゃなくて、敗北も求めていないよ。君にも辛い思いをさせた。本当なら、その思いを晴らさせてあげたい。でも、この状態では……ね。分かって欲しい。怒りの炎に身を任せても、新たな憎悪を生むだけだ。だから、僕は君をとめる。多少、手荒でもね。幸い、この体は魔剣を操れる適性と強大な魔力がある。不可能では……ない!」


 ナギムは飛び上がり、上空で立ち往生をしていたN.N.を魔力をこめた拳で突き上げた。その時に響いたのは轟音――人が人を殴った時のものとはかけ離れていた。

 

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