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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十二章 最終決戦
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自分への試練

―ホテル屋上 夜―

 N.N.を、僕は背後から破壊した。彼の体は、肉片となり地面に落ちる。


(騙せてたみたいだ、良かった。でも、問題はここから……)


「……どういう、つもり、だ?」


 肉片から隠し切れない憤りの声が響く。


「イレギュラー好きでしょう?」

「……初めてむかついたよ。なるほど、やるじゃないか」


 僕が破壊したはずの彼の体は、逆再生されたように戻っていく。


「不老不死って、本当なんですね」

「さっき、二回破壊してきたじゃないか。それでも、信じられなかった? あ~あ、なんか悔しいな。計画が最後の最後に、君に邪魔された不快感が凄いよ」


 そして、彼の体は完全に何事もなかったように元通りになった。破壊された痕跡すら残っていない。


「あえて、泳がされているのかと思っていましたが……」

「いやぁ……完璧に騙されたよ。いつの間に、そんな演技派になったんだい?」


 彼は乱れた髪を整えながら、こちらを睨みつける。


「この面で、表情から読み取られないっていう安心感のお陰でしょうかね。それに、一度舞台には立ったことがあるので」


 僕は、城の下にあったアジトが崩壊したあの日から体を取り戻していた。その際に意識が融合し、破壊の龍の見てきたことが全て僕の中にあったのだ。それらを頼りに、僕は破壊の龍を演じ続けていた。全ては、N.N.の計画を頓挫させる為だ。

 僕の協力がなければ、絶対に世界に終焉は迎えられない。一対一で、きちんと話し合いたかった。誰の邪魔もなく。だから、ぎりぎりまで粘り続けた。


「あぁ~……自分の為にやったことが、君を助けてしまったのかぁ」

「もうこれも必要ありません」


 僕は、般若の面に手を伸ばす。かつて、これは僕が自身の罪を取り戻す為にした変装の道具の一つだった。自分の意思で着たのは確か、N.N.に誘拐された時が最後。趣味が悪いと評判の面だったが、助けられた。


「……っぅ!」


 そして、縫い付けられた面を無理矢理引き剥がした。ぼっかりと空いた穴から、血が溢れ出す。


「結構雑だねぇ。痕になるよ」


 ひさしぶりに肉眼で見た世界、空には満天の星が輝く。破壊の龍の力を通し、感覚的に見ていた世界とはそう変わらないはずなのに、安心感があった。


「別に……貴方ほどじゃありませんが、再生能力はあるので」

「はぁ……参ったな。これが、自分への試練か。まさか、破壊の龍を取り込んでしまうとは。となると、見張りの変幻の龍も君の手にあるのか。やれやれ、正直君を舐めてたよ」

「僕の邪魔はさせません」


 真っ直ぐに戦って、勝てるような相手じゃない。強さも恐ろしさも未知数。今まで勝てていたとして、これから先に一気に逆転されるようなことだってあり得る。言葉での説得が通じるならそうしたいが、彼の雰囲気を見る限り不可能だ。何故なら、歪な笑顔を浮かべて、こちらに殺気を向けてきているから。


「あぁ……フフフ! いいさ、自分は超えていくよ? そして、力尽くでも従わせる。長子様だと思って、優しくしてやってたのに……これは罰だ。気分は最悪だし、その顔を近くで見るだけでおかしくなっちゃいそうなんだよね。痛めつけられても、文句……ないよね? 大丈夫、邪魔者はいないし……災いが降りかかるのは君だけで済むからね!」


 その言葉の直後、息を吸う間もなく――彼の拳が、僕の顔面に直撃した。

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