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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十二章 最終決戦
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すくわれた足元

―N.N. ホテル屋上 夜―

 ついに、世界の終焉を招き入れる時が来た。この日をどれだけ待ち侘びただろう。この世界は、あまりにも救いようがない。反省しても、同じ過ちを永遠と繰り返し続けるだけ。もう見飽きたし、絶望した。


「龍は目覚め、嘆きの咆哮を響かせる。そして、世界は終わるんだ」


 自分の手では何も変えられない、この世界は変わらないと気付いて決断した。その為に必要だった材料――破壊の龍とそれを宿せる器。ようやくこの手に収まった。最後の最後でイレギュラーが起き、今なおどうなるかは読めなくなったが、特に阻むものもない。恐らく、想定通りに収まるだろう。


「準備は整いました。後は、貴方がやってくれればそれで終わります」

「……あぁ」


 自分は、イレギュラーを求めている。けれど、ただ求め続けるのは違うと思っている。自分がやるべきこと、やらなければならないことを進めた上で起こるから価値がある。自分から起こそうと思って起こるものは、イレギュラーとは言わない。

 だから、邪魔が入らないように変幻の龍に守らせているし、最期に人間とカラスが手を取り合えるように共通のどちらの種族に属さない敵を用意した。

 なんて幸せな結末だろう。あんなにいがみ合った者達が手を取り合い、結束して消えるなんて。そのサポート役もいるし、このまま自分の望みは叶えられるだろう。


「イザベラには、ホテルを崩さないように言ってるけど……大丈夫でしょうかねぇ」

「あの女は、吾輩の力を随分と使いこなしている。その力で破壊させることが出来るなら、その破壊をとめることも可能だ」

「流石、イザベラ。貴方にも信用されているなんて妬いちゃうなぁ」

「……くだらん。信用するしないではない、使える使えないの判断だ。あの女が使い物にならなければ、意味がないからな」

「ハハ、そうですか」


 イレギュラーが続いた結果、全ての人を幸福に包み込むことは叶わなかったが、一切の苦痛もなく、罪人であることも知らずにその時を迎えられるのだから問題はないはず。感謝されたっていい。


(この世界と魂の束縛から、やっと解放されるんだ。永かったなぁ。これは、間違いなく自分の意思だ。魂の未練に引っ張られず、自分の決断を……行動に移せたんだ)


「フフ、あまりここで感慨に浸っていてもしょうがないですね。イレギュラーが起こっている以上、呑気にしては足元をすくわれるかもしれませんし……さぁ、長子様。嘆きの咆哮をもって、世界の洗浄を!」


(最前線で、誰よりも先に終焉を迎えられるなんて光栄だなぁ)


「すくわれる、か」

「……ん? どうされましたか」


 しかし、何よりも破壊を望んでいた龍はその姿を保つままであった。何か不満でもあるのか思い、問いかけたその時――。


「っ……!?」


 突如、視界がガラスのように飛び散った。


「その通りですね。足元、すくわれた気分はどうですか?」

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