閃光剣
―ゴンザレス ホテル 夜―
回避能力と瞬間移動に賭けて、俺は攻撃を避け続ける。破片が飛び回るくらいだったならまだ良かったのだが、ガラハッドはその間を縫って嫌らしく魔術を繰り出す。火やら水、風。その攻撃は多岐に渡った。破片と同じように移動して、何かにぶつかるまで決して消えなかった。
「あらあら、騎士様。術の軌道が見え見えだわ。得意じゃないんでしょう、魔術を扱うのは。剣で戦うのが、貴方の道ですもの。当然よね」
「吠えていろ」
「だから、なんで煽るの!?」
いくら鍛えているとはいえ、いくら耐えられるとはいえ、いくら終わりがないからといえ、見えぬ戦いには心が折れそうになる。トーンダウンして欲しいのに、これでは騎士様の心が燃え上がっていく一方だ。
「貴様も中々やるようだ。しかし、顔を隠しているのは感心しないな。そこの悪魔ですら、仮面を外したというのに」
いっぱいいっぱいな俺を見て好奇と感じたのか、彼が剣を振り下ろす。慌てて、魔剣を出現させて受けとめた。
「ほう、筋がいい。状況が違えば、入隊試験に推薦しただろう」
彼の足元の破片は、まるで魔法の絨毯のように動く。これほどまでに広範囲で、様々な物に魔術をかけながらよくここまで出来るものだ。
このレベルに達して、初めて騎士として認められるのだろうか。だとすれば、魔窟過ぎる。特別な力を与えられている訳でもないのに、才能かはたまた努力の賜物か――どちらにしても、元々の俺では及ばない存在であることは目に見えた。
(多分、騎士様が目に見える位置にいたら劣等感で死んじまう。実力も才能も、まるで……及ばない)
「この状況で助かったぜ……ふふ、別にこの甲冑は外してもいいけど、そんな余裕がないもんで」
正直、甲冑は重くて動きにくくて見えにくい。身を守る為、戦いに見合う体を形成するにはこれが最善なのかもしれないが、使徒であるには邪魔でしかなかった。
「そうか、ならば――」
何か言いかけた彼の背後に、イザベラの姿が見えた。
「ちっ」
「うぇ!?」
彼は舌打ちをすると、俺を蹴り飛ばす。
「剣よ、煌めけ。神の力を解放せよ。フラッシュ・ブレード!」
そのまま振り返ることなく、彼はそう唱えて剣を高らかに掲げる。
「眩しい……!」
「これは、魔剣か!?」
瞬間、鋭い光が放たれて場を飲み込む。それに魔力が集中したせいか、漂っていた破片は落下し、魔術は消滅したのが見えた。だが、確認出来たのはそれまで。痛みと眩しさに負けて、反射的に目を閉じてしまったからだ。
(目が痛いっ! 開けてられねぇ……)
「うっ!」
全身に衝撃が走る。一体、自分に何が起こったのか確認出来なかった。まぶたの向こうから光を感じなくなって、ようやく目を開けられた。そして、そこで自分の状況を理解した。
「甲冑が……ねぇじゃねぇか!?」




