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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十一章 白ノ花
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敵意をむき出しに

―イザベラ ホテル 夜―

 瞬間移動、それは常人に成せる技ではない。急激に移動速度を上げる為、それに体がついていけず呼吸器官が弱る。そのまま最悪の場合、死に至る。


(どうして、この兵士はぴんぴんしているの!?)


 しかし、目の前に一人残る兵士に苦しそうな様子は一切ない。それどころか、私を煽る余裕すらある。


(龍の力は感じない。けど、特殊で何か……強いものを感じる)


 何にせよ、ただ者ではないことは明白だった。コバエ達の中に、こんな奴がいたら絶対に気付いていたはずだ。後から来たか、ずっと気配を隠していたかのどちらかだ。


(実質一対一だと思っていたけれど、これはまさかね。一対二になってしまうじゃない。とにかく、今は視界を良好にしないと。三つ目は、一時間あれば完全に修復する。それまでは、見えない所に隠しておきましょう)


 混乱する私に追い打ちをかけるように、ガラハッドは剣を振り下ろし続ける。けれど、何度も不覚を突かれるほど、未熟じゃない。


「……何? 額の目はどこへやった」

「貴方が切り裂いたから、消えちゃったのよ」


 ぼんやりと赤みがかった視界が晴れて、代わりに視野が狭まる。といっても、三六〇度見えていたものが通常に戻っただけだ。


「それは違う! 騎士様、騙されんなよ!」

「ほう……っ!?」


 もはや、この騎士だけに意識を向けていてはいけないと思った。攻撃すると見せかけて、私はひらりと宙を舞った。


「ごちゃごちゃとうるさい外野。そんなに仲間に入れて欲しいなら、入れてあげるわ!」


 彼の後ろには、ちょうど私のあけた穴があった。


(いくら一回目は平気でも、そう何度も瞬間移動を使えるはずはないわ。あれだけの大人数を移動させたんですもの。限界値は必ずあるわ。そして、それは既に迎えているはず。なら、あの穴から落とせるわ! 厄介な相手は、いない方がいいに決まってる)


 佇む兵士に向けて、勢いに乗せて蹴りを繰り出す。それを、彼は両手をクロスさせて受けとめる。私の勢いに負けて徐々に後退していくものの、体勢を決して崩すことはなかった。


「いやいや、これじゃ仲間外れじゃん?」


 その発言の直後、穴に落ちる寸前だった彼が忽然と消えた。


「っ!?」


 勢いに乗っていた私の体は支えを失い、穴に招かれる。そんな中、背後で再び兵士の声がした。


「痛みも苦しみも、もう慣れたんだ。つー訳で、仲良くしようぜ。俺ら、似た者同士だし気が合うと……思わねぇか?」


 異常者同士分かり合える、そう言いたいのだろう。でも、お断りだ。後にも先にも、私にとっての仲間は組織にしかいないのだから。私は翼を広げ、宙を飛ぶ。鳥族なのだから、無様に落下したりはしない。


「やってくれるじゃない。貴方、ただの兵士じゃないわね。そんな器ではないわ。もしかして、事前に騎士様と打ち合わせでもして潜んでいたのかしら」


 私は、凡人に成り済ます彼に問いかけた。


「いいや、勝手に参加したんだ。騎士様を見ろよ、俺にも敵意むき出しだ」


 そういえば、フェイントをかけてからガラハッドがやけに静かだった。視界が狭まったことで、捉えにくくなっていたので気が付かなかったが、私達を同時に攻撃出来る位置で剣を構えていた。

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