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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十一章 白ノ花
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まごうことなき

―イザベラ ホテル 夜―

(中々やるわね、この男。騎士団で部隊を率いているだけはあるということね)


 正直、少し侮っていた。騎士団隊長の中でも、末端に属するこのガラハッドという若い男。経験こそ浅いものの、そのカリスマ性と実力で騎士になった。

 それに、惹かれる者も当然出てくる。現に、彼の部隊に所属する者達がそうだ。ただ、その若さと騎士達の間では権力は弱いこともあり、方針の決定権は皆無に等しかった。

 今回の件も、騎士団としては無介入を決めていた。王の命令がなければ、動けないからだ。この国の王は、ボスだ。面倒ごとを増やしたくないと、彼らの介入を避けたのだ。


「若い子って怖いわ。本当に……」

「恐れて頂けるとは光栄だな」


 しかし、彼は独断で隊を動かした。恐らく、他の騎士達がこの状態を放置しているのは、何も知らぬ民に称賛されているからだろう。そして、全てが終わり、無事だったなら彼の手柄を横取りするつもりでいる。


「いずれ、痛い目を見るわよ。このまま無事だったら、の話だけど」

「随分と、自分の実力に自信があるようだな」

「だって、貴方よりも年上ですもの」

「悪魔は何千年と生きているのか」

「さぁ、知らない方がいいんじゃない。人間としての生に絶望することになるから」


 彼の剣は、とても重い。バリア越しにも伝わってくる。一撃一撃に、正義と思いが乗っているからだろう。それを受けとめきれるのは、私にだってそれがあるからだ。


「永く生きても仕方がない。限られた時の中で、どのように生きるかが重要だ。それに絶望することは決してない」

「ふぅん。なら、ここで終わりなさいよ。慕ってくれた部下と共に」

「……ここで、終わることは有終の美とはかけ離れている。貴様を討ち、仲間と共にここを出る」

「そうは言ってるけど、もう彼らは……」


 私達との戦いに茶々を入れてくるけれど、口ほどにもない。コバエが飛んでいるような感覚で、払えばすぐに吹き飛ばさてしまうほどに弱かった。傷だらけで、遠くに転がっている――はずだった。


「――え!?」


 瞬きをした次の瞬間、吹き飛ばしたはずの彼らは、どこにもいなかった。逃げ場はないし、行動不能になる程度の傷は与えたはず。幻術の類でも使われているのかと探ったが、それが使われているような気配はなかった。


「よそ見とは余裕だな、悪魔よ!」


 動揺の隙を突かれ、初めて彼の攻撃をもろに受けた。咄嗟に、身を翻したものの切っ先が額の目を引き裂いた。視界の一部が赤く染まる。


「一体、何が……っ!?」


 すると、どこから音もなく、誰もいなくなった場所に一人の兵士が現れた。それは、まごうことなき瞬間移動だった。


「まさか、そんな!」

「信じられないって顔だな。でも、信じられないことをしてんのはお互い様じゃね? イザベラさんよ」

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