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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十一章 白ノ花
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一人

―ゴンザレス ホテル 夜―

 悪魔イザベラを名乗る彼女の額の中央には、目がぎょろりと覗く。下にある二つの目よりも大きく、瞬きをする回数も少ない。その見慣れぬおぞましさに、兵士達が怯む。

 しかし、騎士様は流石だった。表情の険しさが、その美形を破壊するほどになってしまったが、恐怖におののいている様子はない。


「目……目が三つもある!」

「あれが悪魔なのか?」

「ありえない。こんなことは……」

「嗚呼、神よ……」


 彼女は、そんな彼らを見て薄ら笑いを浮かべる。


「これで理解してくれたかしら。私が、悪魔であるということを」

「落ち着け、馬鹿者共! この女が悪魔であろうがなかろうが、捕縛対象者であることに変わりない! 先ほどまでの勢いはどうした! お前達は、英国騎士団ガラハッド部隊の一員だろう! 気持ちで負けるな、相手は一人だ!」


 目の前にいる存在が、悪魔だと皆受け入れ始めていた。だが、俺は……納得出来なかった。


(いやいや、この女が悪魔だとしたら、巽も美月も悪魔ってことになるじゃねぇか)


 もしも、悪魔という存在がいるとしたら、俺はそれと初めて相対したということになる。しかし、彼女に気付いた時、初めてのものを見たという感覚はなかった。

 巽らと全く同じ気配や力を感じ、自然と龍の力を宿しているのだと認識した。第一級見極め士である俺が、そう感じたのだから間違いない。


(嘘を……ついている? だとしたら、その意図は何だ? カラスではないと否定するのは、悪魔だと名乗らなければならないのは……)


 俺は、必死で思考を巡らせる。


(ただ責任を押し付けたいのなら、悪魔を出す必要はない。どうしても、名乗らなければならなかったのは……人とカラスの溝を埋める為か? 確か、この国では最近歩み寄りがみられるって聞いたな。それに水を差したくない。それでも、これは絶対にやらなければならなかった……)


 すると、一つの仮説が浮かび上がった。


(カラスがやった悪事でも、人がやった悪事でもなく……そのどちらにも属さない存在がやった悪事であると認識させる為か? 共通の敵だと認識出来れば、嫌でも手を取り合う。全てを水に流せる訳ではねぇが、きっかけにはなるよな……)


 これが、茶番だということだ。そして、ここに敵がいるのなら、どこかに味方がいるということになる。しかし、俺達以外に、このホテルに人はいない。全員が敵対者だ。協力関係が築ける存在は、もうホテルの外にしかいない。


「一人……えぇ、そう。一人ね。一人でも、私は負けないわ。一人残らず、楽に殺してあげるわ!」

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