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遅めのティータイム

―学校 夕方―

 僕と教授は、リアムを保健室に運んでベットに置いた。そして、僕らは椅子に座って保健室のアーナ先生と雑談をしていた。

 アーナ先生は白衣に身を包み茶髪のポニーテールを揺らしながら、ティーポットで紅茶を三つのカップに注いでいた。


「俺も保健室で寝てぇな~」

「駄目ですぅ。教授はただの加齢なんですからぁ。よく授業終わりに息切れしてますよねぇ。というか、その度に保健室に来られても困るんですぅ。加齢は魔術でも魔法でもどうにもなりませんしぃ。いい加減、現実を見たらどうでしょう」

「ハハハ……相変わらずアーナ先生は酷いな、俺まだ三十前半だよ?」

「私から見ればぁ、三十歳なんておじさんですよぉ。ねぇ、タミ君?」


 アーナ先生はまだ若い。僕とそう年齢は離れていないように見える。ただ、ここで賛同を求められても困る。「はい、そうですね」なんて言って、教授から嫌われてしまったらお先が真っ暗だ。


「えぇ……と」

「心で、おじさんだって言ってますよぉ」

「え!? 僕はそんな……」

「三十前半なのに……」


 教授は本当に傷付いてしまったようで、椅子にもたれかかって肩をがっくりと落としてしまった。


「は~い、紅茶を淹れ終わりましたよぉ」


 アーナ先生はおっとりとねちっこい喋り方をするが、言うことは結構辛辣である。


「は~い、どうぞぉ」


 僕は、差し出されたカップを受け取る。教授は俯いたまま、それを受け取った。


「ありがとうございます……」

「いえいえ~」


 アーナ先生は優しく微笑むと、ベットで眠っているリアムの下まで歩み始めた。

 

「……それにしてもぉ、酸素不足になって倒れるなんて何をしたんですぅ? 瞬間移動の練習ですかぁ?」

「違うぞ、浮遊の魔法の練習だ」


 がっくりと肩を落としたままカップを持った教授が、元気のない低い声でそう言った。


「はぇ? 浮遊の魔法? 練習する必要ってあるんですかあ、それぇ。赤ちゃんでもフワフワ飛んでたりするくらいですよぉ? 彼って入試で一番だった子ですよねぇ? どういうことなんですかぁ?」


 やはり、僕が最初思ったことは間違いではなかった。浮遊の魔法は、僕らが生まれて比較的すぐ見る魔法だ。そして、頻繁に見る魔法だ。家族や周囲の人々が子供の周りで使うから、いつの間にか覚えてしまう。

 僕らにとって、言葉を覚えるのと大差ない。言葉と魔法を覚えながら、少しずつ成長していくのだ。だが、それをリアムは出来る環境になかったということ。この魔術大国に住んでいながら。


「知らん。気になって資料を見てみたんだが、リアムは間違いなくここ出身だった。この国に、そんな魔法を使わない民族も宗教もなかったと思うんだがなぁ。近辺の国々にもな。ただ、アメリカって国と他にも東の方にはいくらかあるらしいぜ。その影響を受けた親に育てられたか……にしても、不便だと思うんだがなぁ」


 教授が、ようやく顔を上げて答えた。


「不思議な子ですねぇ。というか、浮遊の魔法で酸素不足の意味が分からないんですがぁ……どこまで飛んで行ったんですぅ?」

「うちゅうとか言ってたぞ、うちゅう。な、タミ」

「は、はい。空の向こうにもう一つ世界があるとか何とか……」

「ふ~ん。うちゅう……メルヘンな子ですねぇ。あ、早く紅茶飲んで下さいねぇ。冷めちゃいますよぉ」


 アーナ先生は、最後残った紅茶のカップを手に取って口に運んだ。

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