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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十章 二人だけの世界
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かくれんぼ

―ヴィンス 浜辺 夜中―

 生え変わった新たな腕を炎刃に変えて、襲う氷を切り裂く。疲労感に襲われることもなく、変幻の力を存分に扱えた。胸が高鳴る、気分が上がる。楽しくて仕方ない。どこまでも行ける気がした。今までにないほどに、自信に満ち溢れていた。

 先ほどまでの状況とは違い過ぎて、エトワールは焦りの表情を隠し切れていなかった。それが、繰り出す技に影響し始めていた。今まで抑え込んでいたものも、隠し通せていたものも、全て曝け出している状態だからよく分かる。


(何としてでも取り返さなければ。まずは、エトワールに接近出来なければ意味がありませんね……この氷の雨が鬱陶しい。一気に燃やし、距離をすぐに詰めることが私に可能でしょうか? なんて、自分自身に問いかけている時間が勿体ないです)


 考えている時間があるくらいならば、行動に移した方がいいと判断した。そして、溢れ出さんばかりの体内に宿る力を解放する。それらを全て熱エネルギーへと変換し、周囲を飛び交う氷へと向けた。


「馬鹿な、どこにそんな……っ!?」


 そして、そのままエトワールの方へと広げていく。氷も水も関係なく、全てを飲み込んでいく。流石に、彼本体は逃げて仕留め損ねたが、ナイフは無事にこの手に戻ってきた。


(良かったです……ふぅ)


 踏みつけられて、雑に扱われてしまったのに目立った傷はないようだった。下が砂浜だったお陰かもしれない。後で、必ずメンテナンスをしておかなければ。


(戻ってきて良かったです。折角、ボスから教えて頂いたものを無駄にしてしまう所でした。この日の為に大切にしてきたのに、危ない危ない。さて、エトワール……はっ……!?)


 顔を上げると、そこには氷の代わりだと言うように――大量のエトワールが浮かんでいた。力をかなり消耗してしまったせいか、ぴくりとも動かない。ただそこに浮かんでいるだけ。


(なるほど……そういうことですか)


 彼は分身を生み出して、ひっそりと息を潜めて紛れているのだ。木を隠すには森という言葉がある。逃げ場もないし、逃げるつもりもない彼は一時的に隠れて時間稼ぎをしているのだろう。目的は、力の回復。しかし、それにも変幻の龍の力を使うので、完全回復は望めない。ただ今よりは元気になれるだろう。

 連続して、変幻の龍の力と破壊の龍の力を使用した。どれだけ慣れていても、訓練していてもいずれ疲労は来る。もしも、あのまま私が息絶えていればこの時間は必要なかったはずだ。彼にとって、予期せぬ出来事だったのだろう。あれほど混乱している彼を初めて見た。


「エトワールーっ!? 隠れても無駄ですよぉ? かくれんぼなんて、子供じゃないんですからぁ~もー!」


 彼がそのつもりならば、私も遊びを手伝ってあげよう。そう決めて、私は分身を破壊し本体を探し回った。

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