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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十九章 子は三界の首枷
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鍛え抜かれた体

―アマータ 街 夕方―

 やはり、纏うものはなるべくならない方がいい。動きやすくて、解放感があるから。


「何故、脱いだ!?」

「なるべくなら、ありのままでいたいもの!」

「上半身裸なんて風邪引いちゃうわよ!」

「恥ずかしい、恥ずかしいよ! アマータ!」

「おんぎゃぁあぁあっ!」


(まるで人を露出狂みたいに……)


「皆を守るには、動きやすい方がいいでしょう!?」

「だからって、何も下着まで脱がなくてもいいんじゃないのか!?」

「いいえ、脱がなきゃ駄目よ!」


 最初から、私はこの恵まれた肉体を持っていた。腹筋も割れて、腕や足の筋肉も異様に発達している。それが不服でたまらなかった。私の求める美しさに反していたから。きっと、鍛えなければすぐに筋肉も落ちていただろう。

 しかし、無意識の内に鍛えてしまうという変な癖で、今なおこのボディを維持している。何なら、より引き締まってきている可能性がある。


(この体を役立てる機会なんて、もうここしかないわよね。嫌で嫌でたまらなかったけど、皆を守るには最適だわ!)


「貴方達、この子怯ませるまで下手に動かないで! そして、モニカ! 申し訳ないんだけど、何とかして赤ちゃんを落ち着かせてくれる? 子供達もしっかり守ってね!」


 あの化け物の習性が今までのものと変わりないなら、恐らく動くものに敏感であるはずだ。ここで、やたらと動き回るものが私だけであったなら、恐らく引き付けられるはずだ。初期段階であるならば、知性も皆無。単純な動きだけでも、問題ないだろう。


「……いいだろう、上手くやれよ」


 少しの間を置いて、モニカはそう言った。


「えぇ! 任せて頂戴!」


 託されると、力が湧いてくる。使命感という薪が、心を燃やす。


「さぁ、獲物はこっちよ! 肉がもりもりの方が大好きでしょ! 食べ応えもあるってもんよね? でも、そう簡単には食べさせてあげないけどね!」


 鍛え抜いてしまった肉体。それが映えるように、私はゆっくりと移動しながら様々なポージングを披露する。少しずつ、モニカ達から距離を取る為に。


「見なさい! 貴方には、相当魅力的でしょ! 美味しそうでしょ! 脂もたっぷりよ!」


 そして、化け物は見事にこちらの思惑にはまってくれた。ちょうど、泣き声が小さくなってくれたことも幸いした。


「ウ゛ルルル……ガァアァァッ!」


 うめき、叫びながらこちらへと突進してくる。びちゃびちゃと形状を変化させながら。


(化け物の急所は……眼球!)


 私は拳を作り、一点を見つめる。どろどろの体から覗く、二つの穴。それが目だ。


「ハァァァッ!」


 意識を集中させ、拳で化け物の眼球を力いっぱいに殴った。


「ギャゥ!?」


 抗われることなど想像も、いや想像する頭すらない化け物は呆気なく吹き飛ばされ、その場に転がる。


「すっげぇ――」

「大きな声出さないでよ、無駄になっちゃうから」


(化け物が怯んだ、今がチャンスだわ)


 化け物に注意を向けつつ、私はモニカ達に言った。


「今がチャンスよ、逃げなさい――」

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