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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十九章 子は三界の首枷
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自らの目で見る理由

―エトワール モニカの家付近 朝―

「――という訳で、家族でどっか遊びに行かない?」

「という訳で、って言われても……今日元気になったばっかりなのに、急にそんな話を振られても」


 少女は心配そうに、椅子に座る母親の顔を覗き込む。


「問題ない。気にすることはない」

「ほんと!? ほんとに本当!?」


 うずうずとしていた少年が、その母親の一言を聞いて飛び上がる。


「嘘などつかない」

「でも……」

「心配するな。子供らしく、飛び跳ねて踊れ。なぁ? お前もそう思うだろう?」


 いつになく優しい口調のモニカの腕の中には、赤子がいた。手足を動かしながら、母親の顔をじっと見つめる。そして、問いかけられると、眩しく笑うのだった。


「子供って、私もう十六歳なんだけどなぁ。そんなに、はしゃいだりしないよ」

「まぁまぁ、モニカがいいって言ってるんだからいいじゃないの。無理しない程度に、遊べばいいのよ。いざという時は、この私にどーんと任せてくれればいいんだから!」


 アマータは、どんと厚い胸板を叩く。これほどまでに安心感を与えてくれる存在はいない。


「やったやった! どこ行く? 遊園地もいいなぁ~! あ、水族館もいいなぁ~。でも、動物園もかっけぇ動物いるって友達に聞いたんだよね~。魔術館も捨てがたい! どうしよ!」


 大好きな家族と遊びに行ける――それを確信した少年は、頭を抱えて想像を膨らませながら、足をじたばたと動かす。


「何を悩んでいる? 全部行けばいいだろう」

「ちょっと!? 何言ってるの!? いくらなんでも、それは張り切り過ぎ! 第一、お母さんはずっと座ってたんだから!」

「流石に、一気に全部は無理だ。だが、日数をかけて何度かに分けて行けばいい。単純なことだ」

「単純って……もう……」


 と、口では言っていたが、表情は喜びを隠し切れていなかった。


「わざわざ自分の目で見に来るなんて、よっぽど興味があるんですねぇ。この家庭に」


 いつからそこにいたのか。観察をする俺の隣に、ヴィンスが立っていた。そして、いつもの薄ら笑いを浮かべる。


「詳細を知っておく必要がある。特にこの段階では。あれでは、全てを完璧に見ることは出来ない」

「あ、ついに白状しましたね」

「あぁ、もう隠すつもりもない。お前も気付いているようだし、それを得意げに何人かに明かしていたな」

「だって、すぐに殺されるし問題ないでしょう? 彼らを揺すって遊びたかったんですよ。ほら、絶望実験って奴です」


(その報告の後に、行方が掴めなくなっている方が気にかかる。今までにも何度かあったが……分身をいくつか作れば精度も落ちるから偶然と片付けていた。しかし、今回は何かしらの手段を用いて、こちらの詮索を避けているとしか思えなかった)


「問題はその先なのだが……まぁいい。それより……」


 俺には、また新たに現れた二人組の方が気にかかっていた。振り返り、彼女らに聞いた。


「ガイア、何故ここにその男がいる?」

「ひっ、そ、それは……」


 俺の問いかけに対し、しどろもどろになるガイア。破壊の龍の監視役を務めている。役に立っているかどうかは置いておいて、常に密着している。

 すると、それが気に食わなかったのか――。


「吾輩の行く道に疑問でも? 態度がなっておらぬぞ、無礼者!」


 その声色だけで、大地が凍てつく感覚ような感覚に襲われた。本能が危険を訴え、怖気づいてしまうほどだった。

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