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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十八章 牙をむく
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第一無礼

―ファートゥム 公園 早朝―

 バランサが協力してくれる――その安堵感から、力が抜けてその場に座り込む。


(本当に良かったです。もしも、断られていたらと思うと……ぞっとします)


 彼女は中々に気まぐれだ。いくらボスを嫌っていたとしても、彼女の気分が優れなければ断られるのは想像に難くない。そもそも、そんなにメリットがない。裏切るというのは、デメリットしかないのだ。

 その最大のデメリットとして、ボスの想定に私の行動があったとしたら――ただ泳がされているだけということになる。そのリスクは、彼女は理解しているはず。それでも、こんな私の手を取ってくれた。怖い印象があったけれど、根はいい人なのかもしれない。


(でも、本当に全てを彼女に任せたままでいいのでしょうか? 一応、発案したのはこの私……無責任になってしまうのでは?)


 遠く消えていく彼女の背を眺めていると、そんな不安に襲われた。確かに彼女の方が、私よりも役職も上。つまり、実力も上。信用する足る人物であることは、重々承知している。

 不安を覚える理由はただ一つ。裏切りの話を持ち掛けたのは、他ならぬ私なのに、人任せにしているなんてと思うからだ。


(今すぐにでも、追いかけた方がいいのでは? いや、でもそんな提案をしたら彼女の気を損ねてしまうかも。あぁ、もう行ってしまった……)


 ああだこうだと葛藤している間に、気が付けば彼女の姿は消えていた。もう任せるしかなくなった。


(連絡を待つしかなくなってしまいました。一体、いつになるのでしょう。しかし、急かす訳にはいきませんし……)


 組織の役職には、私達のようなカラスが就くものとカラス以外の者が就くものに分かれる。後者を私達の間では、特別枠と呼ぶ。自由に動き回れて、数字による制約も受けない。何ならボスとも対等である。処分もなく、守られているという印象がある。


(十一番目は、特別枠です。つまり、私の番はすぐそこ。もう与えられている役割もない。刻一刻を争う状態に陥ってしまっています。もうここまで来ると祈るしかないのですね。情けない、うぅ……)


 我が儘を言える立場ではないし、彼女にああだこうだと言えるような役職でもない。私よりも上の立場の人にお願いしている時点で、第一無礼だ。第二無礼を発動してはいけない。


(もう、しばらくはバランサ以外の顔を見たくはありませんね。意味はないかもしれませんが、大人しくしておきましょう。あ、でも場所は毎日変えた方がいいかもしれませんね。今、私のいる所はボスが手配してくれた場所ですからね。そうなると、顔をどうにかしないと……受け入れる人が増えてきた中でも、流石に私の顔は急にレベルが上がり過ぎてます)


 今出来ることは、その日を無事に迎えられるように最善を尽くすこと。その為の努力は惜しまないつもりだ。たとえ、信念を曲げることになったとしても。

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