表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十八章 牙をむく
634/768

夢が叶うのは夢だけさ

―バランサ 公園 早朝―

 オレは、あの真っ白男が嫌いだ。理由は一つ、その全てが気に入らない。単純にそれだけだ。生理的に無理なのだ。ここまで嫌いになった奴は生まれて初めてだ。全てを見透かしたような目、態度、表情……今思い出すだけでも虫唾が走る。


「フレイとフレイヤ、死んだ。悲しい。怖い。逃げ……る。皆、ボスの好き。私、悪い。皆、怒る。しかしながら、バランサではいい! 私では弱い! バランサ、助けて!」


 オレに振り向いて貰えたのが余程嬉しかったのか、次第にファートゥムはテンションを上げていく。支離滅裂さが増していた。


「ん、ま、要するに……裏切りたいってことだよなァ。でも、オレ以外の組織以外の奴はあいつに忠誠を誓っているし、そんなことを漏らしたらヤベェってことなァ? で、このオレに目を付けたと。忠誠心も皆無、むしろ嫌悪すら抱いてる。そんなオレならァ、力を貸してくれるような気がする……と」


(その着眼点と魂胆は嫌いじゃねぇ。嫌いではねぇがァ、それってオレがこいつに尽くすってことになるよなァ? オレは尽くしたいんじゃねぇんだよなァ、尽くされてぇんだよなァ。その身を焦がすくらい、骨の髄まで、命を散らすくらい。それが逆になるってんのはァ、ため息が出るくらいつまらないよなァ。あァ、あァ。でもなァ、嫌いではねぇんだよなァ)


「はい、はい! お願いされます! 分かっ、分かられます! カァッ……だから、助けて!」


(そうだなァ。最終的に、オレに尽くした形になるようになりゃァいいのか。よし! 腹括ってやるかァ!)


「その熱意、いいなァ。オレ、嬉しいぜ。頑張ったんだなァ。そこまでして、生きたいって思ったんだなァ」

「私は、知りませんでした。死ぬこと」

「あァ? じゃあ、いつ知ったんだァ?」

「最近のこと」

「そりゃ可哀相に。言葉巧みに招かれて、ほいほいと来た訳だなァ?」

「一族の復活、カラスの繁栄……私の幸せが、最後にあるなどと」


 その幸せは、多分現実にはない。あいつは未来を願う連中に対しては、真実に適度に嘘を混ぜる。そうまでして欲しい人材だったということだが、不要になれば手向けに望みを添えて、容赦なく切り捨てる。死を望みとする連中は、その真実をしっかりと受けとめて傍にいる。実際にその時が訪れると、気変わりする奴もいるけれどマジで頭がおかしいと心から思う。


「なるほどなァ、てめぇはそう言われて釣られた訳かァ。惨めだなァ。その幸せはァ、現実にはねぇさァ。ボスの最終目標知らねぇんだァ? なら、教えてやるわァ。あいつは、この世界を終わらせるつもりなんだぜ。一切の苦痛を味合わせずに、一瞬で。で、その協力者として特別に夢を叶えてやるってんだァ。夢が叶うのは、夢ん中だけさァ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ