双子として
―フレイ 街 昼―
俺達はカフェでパンケーキを食い終えて、自由奔放な龍を探して街を歩いていた。ヴィンスは、もっといてもいいと食い下がってきたが、流石に断った。美味しい物も食えて、俺達の在り方についてのヒントを得られて腹いっぱいだったから。あんな奴に道を示されることになるとは。少し不服だったが、言っていることは理に叶っていた。
(なんで、あいつはわざわざ? 分からねぇ、何か企みであんのか?)
ヴィンスの人となりや、普段の言動から考えると相当に怪しかった。
「ねぇ、なんであいつ急にあんなことを言ってきたと思う? うちらが強くなるとか、どうでもよくない? どっちかといえば、強くなる方が困るんじゃないの? あいつの立場が、もしかしたら奪われちゃうかもしれないのに」
唐突に、フレイヤが話しかけてきた。まさか、同じようなことを考えているとは。ますます、あの言葉に説得力が生まれ、謎が深まる。
「俺も気になってた。あいつには、何にもメリットはねぇよなぁ。何か良からぬことを考えてんのかなぁ。けどよぉ、言っていることに間違いはねぇような気がするんだよなぁ」
(でも、俺にはもう決闘に挑む権利はない……なんて言ったら、絶対に馬鹿にされる。でも、あの龍を抑え込むくらいの力を示せれば、監視者としての務めを果たせれば……もしかしたら、許して貰えるかもしれねぇ)
「話を聞いてあげるみたいな体で、あのカフェに呼ばれた訳じゃない? なのに、あいつの話を聞いただけで終わってない? なんか、とりあえずエトワールの監視のない所で話したかったみたいな」
「でもまぁ、言ってることは結構説得力あったよな。あんな奴だけど、一応四番目だし。あと、ボスにさ。言われたんだよ――」
そして、俺はフレイヤが晩餐会に参加している間の出来事を伝えた。その時に決闘の権利を失ったことは隠して。
「合わせて、666回? うちら、そんなに言ってたの? え?」
「そっち気にしてんじゃねぇよ。一人で、一人で、一人でなら……って方に注目しろよ。馬鹿だなぁ。確かに、俺達はずっと一人でやりたかった。双子だからって同じ扱いをされたくなかった。でも、それが……俺達の可能性を潰していたってことなんじゃねぇのか。それに、ボスは気付いていた。ま、お前には頑張って貰うことになるけどよ。双子としての実力、かましてやってもいいんじゃねぇ? そしたらよ、あのわがまま野郎も問答無用で手のひらの上ってな」
「はん、誰に言ってんのよ。馬鹿兄貴。頑張るのは、そっちでしょ! うちについて来なさいよね!」
大きく鼻で笑って、フレイヤは走り出す。子供みたいで、あほらしい。このくらいでしか、俺に勝つ方法が見つけられないから哀れだ。
「ついて来いだって? 現実を見て、物言えよな!」
兄が妹に負けるはずがない。妹が兄に勝るはずがない。でも、俺が並び立ってやることは出来る。そして、全て上手くいったらまた俺が前に行くだけだ。
(ふん、一時的な共闘だ。兄として、俺が優しくしてやらねぇとな。俺が前に進めればそれでいい。それまでの辛抱だ。乗せれば、こっちの思うように動いてくれる。ちょっとはいい気にさせてやらねぇと)
俺は力を抜いて、フレイヤの後を追った。




