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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十六章 穢れを探して
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ミニチュアサイズのエトワール

―フレイ 街 昼―

(行ってしまった……行ってしまったけど!? え、後処理って何!? この状態を!? は!? はぁ!? 馬鹿なんじゃねぇのか!?)


 周囲は、騒然としていた。変な仮面の男がうろついてたことと、よく分からないけど血を吐いて倒れている男。こんなの、俺らだけでどうこう出来る訳がない。


「何? 事件?」

「そういえば、あの紫の奴……結構前に話題になった、自称犯人と特徴似てねぇか?」

「え? なんで今? 趣味の悪いコスプレをしてるだけじゃないの?」

「ね、ねぇ、それよりどうするの? あの人達、カラスでしょ?」

「今時、それで判断するのは良くないよ。誰か警察やら医者でも呼んでやれよ……」


 人間達は、ひそひそと話すばかりで俺らに近付いてこようとはしない。どうにかするべきなのかもしれないという思いはあるらしいが、見えない深い溝の前で立ち止まっている。変わろうとしている人間もいる、カラスもいる。ただ、それはまだほんの一部であるのだと身に染みて感じた。

 別に助けて欲しい訳じゃないが、見世物にされている気分だった。見ているだけなら、邪魔でしかない。見ないフリでもして、どっかに行って欲しい。


「ねぇ、どうすんのよ! このごったごたを、うちらだけでどうにかしろって無茶振りしてあいつ消えたんだけど!?」

「そんなことを、俺に言われても困るんだよ!」

「はぁ!? 何年兄貴やってんの!?」

「生まれた時からずっとですけど、何か!? つか、お前も誰かに頼る前に自分でどうにかしようっていう考えはねぇのか! あぁ、そうか! 馬鹿だから無理だよなぁ!?」

「馬鹿!? うちのどこがどんな風に馬鹿なのよ!」


 使えない妹を持つと困る。何も出来ないくせに、こっちにすぐ頼ろうとする。馬鹿で未熟な妹だから、俺という頼もしい兄にうっかり頼りたくなってしまうのも分かる。だが、どんなに優れた兄でも限界はある。


「ぐっ……駄目ですよ、双子同士仲良くしないと。それと、心配する必要はないですよ。う゛う……事後処理が得意な彼が見てくれて……ますからね」


 ヴィンスが胸を押さえながら、苦しそうに言う。


「え?」

「私達は常に監視されています。エトワールによって」

「はぁ!? なんでよ!?」


(そうか、まだフレイヤは知らねぇ……)


「ボスのご命令ですよ。あの人は誰も信用していませんから……フフフ。気付いていなかったんですか? 鈍いですね。ほら、見て下さい。あっち、貴方達の監視用の分身はあっちですよっと、あぁよいしょ」


 ヴィンスは薄ら笑いを浮かべて立ち上がり、物陰を指差す。

 すると、そこにはミニチュアのようなサイズ感のエトワールがこちらをひっそりと覗いていた。

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