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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十五章 力に堕ちて
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決着

―N.N. アジト 夜―

 容赦も、慈悲もない。組織の者達を家族と愛する普段のエトワールからは、かけ離れた姿だ。あれほどまでにうるさかったフレイも無数の傷を負い、気を失って静かになった。それでも、分身達は攻撃をやめない。少し危険な状態だ。


(分身を増やした分だけ、判断力や思考力が鈍ってしまうからね……誰かがとめてあげないと)


 自分は立ち上がり、分身に紛れて手を動かし続けるエトワールの背後を取る。そして、片手を動かせないように握り締めた。


「そこまで」


 それで我に返ったのか、部屋いっぱいにいた分身達は瞬く間に消えた。


「流石は、五番目だ。今日のエトワールは、ちょっと感情的だったから手間取るかもしれないと思ったけど、ほぼ想定通りだったね」


 自分がそう言うと、彼は自身の首元に目線を向けた。


「その想定外……イレギュラーは、この傷ですか」

「あぁ、驚いたよ。フレイに、自分の予測を超えるほどの特異さはないと思ってたんだけど……まぁ、巽君がいるから、その影響とかもあったのかなぁ」


 巽君には、これから起こることを変える力がある。基本的には、彼の命に関わることだけだ。しかし、もしかしたらその力の範囲が広がりつつあるのかもしれない。


「もしも、少しでも位置がずれていたら、俺は……」

「死んでしまっていたかもね」

「あんな偶然で、その危険性に晒されていた……情けない」

「分身を増やすと、その分だけ本体の脳の機能は低下するし仕方ない。今は、常時九体の分身を出してる訳で、それに加えて数十体ぽんぽん出したからね。普段の察知する能力も下がる。まぁ、でも……いいよ。勝利は勝利。掠り傷で済んでいる訳だから。決闘に挑む権利はあるよ。それが一つ格上のヴィンスに通用するかな?」


 試しに想像し、予測する。エトワールが現状に不満を抱いていることから、決闘を申し込みに来ることは分かっていた。そこから先のことは、実際にそれが起きてからにしようと思っていた。


(それぞれの性格と能力、現状を考えると……ほぼほぼ同じくらいか。やはり、二人に用意する決闘の時期はもう少し後だな)


「ボスには見えているのですか、決闘の行き着く先が」

「見えてるって言い方あれだなぁ。考えていると言って欲しいなぁ、実際そうだしさ」

「そうですね、失礼致しました。あの……それと、言いにくいのですが、そろそろ手を離して頂いても……」

「あ? おぉ、ごめんごめん」


 掴んでいたことをすっかり忘れていた。自分が手を離すと、少し安堵したように息を吐き、エトワールはこちらに向き直る。


「それで、決闘の時期は……」

「今は、皆もどたばたしてるし……もう少し後でね。でも、大丈夫。ちゃんと受けさせてあげるから。それまでは、鍛錬期間だと思って準備しなよ。あんな奴だけど、そう簡単に勝てるような相手でもないだろうしさ」

「御意。場を掻き回してしまい申し訳ございません。しっかりと精進して参ります」


 そして、謝意を示して跪く。


(お堅いなぁ)


「うんうん、そうしてそうして」


 適当に励まして、彼の頭をポンポンと軽く撫でた。


(さて……後は)


 自分はフレイの投げ捨てた剣の方へと向かい、それを手に取った。すると、どうだろう。それが、とてつもなく自分の中で馴染んだような気がした。

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