表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十五章 力に堕ちて
600/768

決闘させて

―フレイ アジト 夜―

「へぇ、どうしてまた急に」


 組織での役職を上げる為、決闘に挑みたい――それを聞いたボスは、神妙な面持ちになる。


「ヴィンスの横暴が心配なのです。普段から、他者の気持ちを顧みることのない男です。家族として心配でたまりません。しかし、現状として俺が五番であり、ヴィンスが四番です。たった一つでも、あまりに大きい差です。何かあれば、俺は奴に従わなければならない。あの無神経さで、その権利を振るわれては他の者達が心配でなりません。だから、せめて俺があいつの上に立てれば……その権利を制限することも出来るはずです。ですから、どうか……」


(ヴィンス、ヴィンスって……大好きかよ。幼馴染みたいな感じで、つるんでるのは知ってっけど。どう考えても、自分があいつよりも勝りたいだけじゃん。そんなの許される訳ねぇ――)


「いいんじゃないかな、やってみれば」

「なっ!? なんでだよ!?」


 予想外の返し過ぎて、思わず突っ込んでしまった。


「向上心があるのはいいことだと思うからさ。理由はどうあれ……ね。それに、今のエトワールは何だか、らしさがない。多分、そのもやもやを解決しなきゃどうにもならないんだろうから」


 その口ぶりからするに、ボスも分かっているみたいだった。その上で許可を出したのだ。俺は、散々断られてきたのに納得がいかない。


「はぁ!? だったら、俺にだって決闘させろよ! 俺一人で! 俺だって向上心の塊だ! なんで、エトワールだけそんなにあっさり許可を出すんだよ!? おかしいだろっ!」


 俺のそう訴えると、ボスは心底呆れた様子で息を吐いた。そして、ようやくガイアから手を離して、俺を見据える。


「はぁ……お前もしつこいねぇ。兄妹揃ってよく似てる。たった今合計して、666回に達した。一人で、一人で、一人でなら……お前達は何も成長しなかった。何も結び付けられなかった。何も学べなかった。あれだけの期間がありながら」


 体の芯から凍り付いてしまいそうなほどに、冷たい視線だった。その威圧感から、俺は震えた。口を開くことも出来なくなる。

 俺は初めて、ボスに対して恐怖を覚えた。このまま殺されてしまうんじゃないか、と。


「だから、もう優しく接することはやめる。何度も何度も諭してきてあげたね。分からないようなら、仕方がない。やれるならやってみればいい。いい相手が、すぐそこにいる訳だから。エトワール」

「はっ」


 エトワールは、何かを察した様子で応じる。そして、俺の前にゆっくりと歩み出る。


「フレイ、君がここでエトワールに勝てたなら……望み通りにしてあげよう。ただし、これが最後のチャンスさ。もう次はない。決闘とは、そういうものだから。十二番となる決闘で、お前がそうしたように。そして、エトワール……もう色々と察してくれているようで話が早い。ここで負けるようならば、決闘はなしにする。格下相手だ。その威厳と実力を、再度測らせて貰おうか――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ