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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十五章 力に堕ちて
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会議ごっこ

―エトワール ? 朝―

(こうやって集まったのは、一体いつぶりか。そもそも、こんなまともな会議らしい会議をするのは……初めてかもしれないな)


 部屋には、組織に所属する役職を与えられている者が十二名集められていた。ボスを起点に、時計回りに序列に従って座っている。それぞれ役職名を持っているが、あまり使われていない。昔はどうだったのか知らないが、今では数字だけが俺達の間で飛び交っている状態だ。

 しかし、一向に会議は始まらない。それは、ボスが始める気がないからだ。そこで、俺は致し方なく順に顔を見て、情報の整理をしていた。


(浸っているのだろうか……?)


「いや~全員が揃うと、圧巻だねぇ」


 組織の頂点、魔術師(マグス)であるボスがにこやかに言う。


「全員……もう何人もいない。一部よ」


 二番目の女教皇(パーピッサ)、イザベラ。彼女は、酷く憔悴していた。


「帰りたい、帰りたい、帰りたい……あたし、もう帰りたい」


 三番目の女帝(インペラートリクス)のガイア。相変わらずの、面倒臭さを発揮している。誰かが触れてあげれば落ち着くのだが、皆もう慣れてしまっている。


「アルモニアの死に際は、実に美しかったですよぉ? 遠くで見ていて、震えがとまりませんでした。死というものは、おおよその者にとって恐怖であるはずなのに……彼女はその対極にいた。餌になる者の姿じゃありませんでしたぁ……」


 四番目の皇帝(インペラートル)のヴィンス。アルモニアの死の瞬間を回顧しながら、恍惚とした表情を浮かべている。


「趣味が悪い。アルモニアが望んだ死の形とはいえ、好ましくない」


 ヴィンスの発言を、俺は咎める。付き合いも長いし、彼のことはよく分かっているつもりだ。そんな俺は五番目の教皇(パーパ)としての役割を持っている。


「まぁまぁ、彼らしくていいじゃない? そりゃ、仲間がいなくなってしまったことは悲しいけれど、望んだ形で終われたんだからいいじゃないのよ、ンフフ」


 六番目の恋人(アマータ)。彼、いや彼女? は役職名をそのまま名前として名乗っている。この俺が探っても、何も情報がない。意図的にかなり綿密に隠されているようだ。


「ったく、めんどくせぇなァ。わざわざ来てやってんだからよぉ、さっさと言いたいこと言ってくれよなァ」


 八番目の正義(ユースティティア)、バランサ。彼女は、かなり粗暴だ。常に態度も悪くて、ボスも扱いに困っている。


「ほっほっほ、初めて見る顔もあるのぉ。そうじゃのぉ」


 九番目の隠者ホモーソーリターリウス、双龍で変幻の力を持つ者。カラスではないが、その信念に賛同し組織に属している。今は、老人の姿に扮しているようだ。


「カァ」


 十番目の運命の輪(ロタフォルトゥーナエ)。カラスの鳥としての姿を好み、それを決して戻すことはない。その種であることに、誰よりも誇りを持っている。一鳴きした後、ちらりと隣に座る人物に目を向けた。気になるのだろう、その気味悪さが。無理もない。


(顔面に縫い付けられた般若の面とやらに、紫の髪。この国では見慣れぬ侍の格好。こんなのが急に現れたら、隣にいたら誰だって普通は不思議に思う)


 先日、新たに加入した十一番目の(ウィーレース)。長らく不在だった席が、ようやく埋まった。彼は何の反応も示さず、ただ座ってびくともしない。彼は応じないのだ、ボスの言葉以外には。

 だからこそ、事情を知らぬ者達は気になって仕方がないのだ。その代表例が、双子達だ。


「きゃー怖い顔!」

「はん、フレイヤは怖いだろ。俺は、全然怖くねぇ!」

「はぁ!? ちょっと冗談で言ってみただけだし。うちだって、全然怖くないし。フレイは、本当は怖いんじゃないですか~」


 十二番目の吊るされた(ホモーススペ)(ンスス)であるフレイ、十三番目の死神(モルス)であるフレイヤ。二人は双子だ。しかし、絶望的な仲の悪さ。それは、期間内に改善されることはなかった。

 その二人が大声で喧嘩を始めたものだから、それがボスの耳にも届いたのだろう。それに反応して、思い出したかのようについに本題を言い始めた。


「今回、集まって貰ったのはそこの新人さんの紹介の為だ。ほら、皆ちゅ~もーく!」


 ボスは立ち上がり、十一番目の彼の背後へと立って肩を持った。それによって、皆はようやく静かになった。長らく待った会議の始まりだ。


「まず彼はね、巽君だよ――」

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