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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十四章 因果断絶
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空間の崩壊

―教会 ?―

 扉がばたんと閉まったと同時、ゴンザレスはぐったりと膝をついた。


「面倒な奴は帰ったし、大体のことは片付いたみたいだぜ……ハハ。あぁ、これ返す」


 死にそうな顔で、ゴンザレスは僕に開かずの扉を投げ渡す。


「ちょっ!? そんな乱暴な扱いをするなよ」

「あぁ? 別に壊れねぇんだからいいだろ。つーか、この扉を爆破したのは誰だったかねぇ。だ~れが、一番乱暴に扱ってたのかねぇ」


 じーっと軽蔑するような目で、僕を見る。


「……それは、過去のことだから」


 恥ずべき記憶が蘇る。しかし、その件に関しては猛省している。酷く疲れていたのだ、あの頃は。


「都合がいい、あぁ都合がいい……よっこらせ」


 呆れた様子で、ゴンザレスは立ち上がる。


「――お前達、もうじきここは崩れ落ちる。急いで退散するぞ」


 すると、声が響いた。その声の主は、ヴォーダンさんのものであると分かった。しかし、姿はどこにも見当たらない。近くから声が聞こえるのにも関わらずだ。


「おいおい、まさかとは思うが……実体を映せなくなるくらいに力を消耗しちまったのかよ」


 それに対して、ゴンザレスは動揺する素振りもなく平然と受け答えをする。


「封印し、戒めを与えるだけで限界であった」

「見通し甘かったんじゃね?」

「お互いに入念に準備していたが故だ。しかし、これで奴の動きはとめられた。また、ひっそりと休むとしよう。良い物件は、他にどこかあるだろうか」

「……閏を手放すのか」

「随分と邪魔をしたからな。さて、帰るぞ。お前も時間がないのであろう。あの鳥族の娘と父親を連れて」


 相変わらず、小鳥は歌い続けている。夢中になっているみたいだ。彼女に託したペンダントの力の影響もあるのかもしれない。


「あぁ、てか……それって、また俺がやるのか?」

「そうなるであろう。一番負担なく出来るのは、お前しかおらん」

「負担はあんだよ……あぁ、もう! やるけども! 人使いが荒いんだよ。マジで」


 ゴンザレスは苛立ちながらも飛び上がり、宙に浮いて歌い続ける小鳥の手を握る。


「つか、おい。くそ親父は、どこだ!?」

「あぁ、ここだ。そんなに焦るな。わしが、そんな失態をするはずがないだろう」


 空間が歪んだかと思えば、そこから眠る父上が姿を見せた。


「父上……!」


 強制的に飛ばされて、どうなっているのだろうと不安に思っていた所だった。父上に何もなかったかどうか確認する為に、僕は歩み寄ろうとした。


「お前も逃げなければ、危ないぞ。空間は崩壊を始めている。出口は、その扉を開ければすぐだ。いくら死なぬとは言えども……相応のリスクはあるということは、決して忘れるな」


 悲しくも僕の手は空を切った。ゴンザレスの瞬間移動によって、父上は飛ばされてしまった。悪意があるとしか思えなかった。落ち込む僕に残されたのは、ヴォーダンさんの言葉だけだった。


(逃げろって……一応、僕も外に連れてってくれてもいいのに。ゴンザレスなら、一人くらい途中下車くらい出来るだろうに。というか、僕は怪我人――)


「がっ!?」


 刹那、激しく教会が揺れる。それが、傷だらけの体に沁みた。どうやら、崩壊が始まってしまったらしい。不平不満を漏らしている暇はないみたいだ。


「くそっ!」


 歯を食いしばり、痛みを堪えながら扉に向かって、僕は真っ直ぐに走った。そして、必死で取っ手に手を伸ばし――。

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