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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十四章 因果断絶
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氷の化け物

―ゴンザレス 教会 ?―

 絶望に浸る間もなく、リアムは部屋全体を凍らせていく。先ほどまでよりも強大な力だった。俺は、自分自身が凍らないようにするだけで精一杯だった。


「く、そ……」


 どれだけ炎で温めても、寒くて寒くてたまらない。しかも、炎も凍る。その度に、新しいものに変えなくてはならなかった。その頻度は早い。寒さと相まって、力がみるみる奪われていく。先ほどのように、自分自身を燃やすという選択は迂闊に出来なかった。


「はぁ、はぁ……流石は、俺の憧れだね。こんなにも力を解放しているのに、君はまだ凍らない。普通なら、とっくに死んでてもおかしくないくらいにやっているのになぁ……あぁ、普通じゃないか。巽は。俺と同じだった」


 ただ、その強大な力の解放は彼にも負担となっている様子であった。肩で息をしながら、困惑した表情で俺を見つめる。その目は、とてつもなく冷たかった。まるで、氷のように。


「こんなんじゃ、足りない。もっとだ、モっと……俺にハ、ロキ様から頂イた力があルんだから……!」


 さらに膨張していく力、氷の上に氷が張っていく。何とか炎で弾いたものの、これ以上になると対応しきれなくなると感じた。


(時間稼ぎ、時間を稼げ。捕まったらアウトなんだ。勝つなんてことは考えていない、どうすれば、ウザい動きが出来るかだけを考えれば……ん?)


 追い詰められていく中、異変に気が付いた。凍っているのは、この場所や炎だけではない。力の根源であるはずのリアムも凍っていった。頭から、氷の衣装をまとうように。


「ロ、きさまの、ロき様の力……もっと俺ニ力ヲ……幸セを……」


 それに伴って、俺に迫っていた力が移動していく。全てがリアムの元へと戻っていく。勢いはそのままに、逆再生を見ているかのようだった。


「うぅうぅう……」


 逆流が収まった時、目の前にいるのはもはや人ではなかった。透明な氷に包まれた、歪な化け物。今まで放ち続けていた力を蓄え、底知れぬ魔力の強さを漂わせてくる。


「お、お~い、リアム? 自我あるかぁ~?」


 寒さが収まって、口を開く余裕も出来た俺は恐る恐る尋ねる。


「ォオオオ……」


 俺の声に反応して、頭らしきものを上げた。だが、うめき声を出すばかりで返事はなかった。


(氷の塊みたいじゃねぇか。ロキとやらは、これが目的だったのか? 力を高めたのは、そいつだよな。知らなかったとは思えない。最終的にこうなることを望んで、この場を用意したのか? あんなにも信じてくれる奴を、平然とこんな姿に変えたのか? 悪魔の所業だな)


「そんな状態じゃ、幸せも不幸も感じられねぇだろ。馬鹿じゃねぇの。本末転倒じゃねぇか……リアム」

「ア――」


 氷の塊はミシミシと音を立てながら、口のようなものを全開にする。すると、そこから吹雪が発せられた。一気に場が冷え切って、また凍っていく。ただ、攻撃は避けやすかった。何も考えていない。俺という存在が目に入ったら、手当たり次第の攻撃だったから。


(これなら……稼げる、時間を!)


 策を見い出せた俺は、あっちこっちへと飛び回り、氷の化け物と化したリアムの攻撃を避け続けた。

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