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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十四章 因果断絶
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肉体を手放して

―ロキ 教会 ?―

 彼の持つ槍は、絶対に敵を射抜くと言われている。しかし、必ず、絶対、確実に……そんな言葉は、私の前では通用しない。嘘をつく為の常套句は、私の味方をする。私は、言葉を真逆にする力がある。使える範囲は、一部に限るが。


「貴方が眠っている間、私は起きていたのですよ。ただ、起きていた訳ではありません。その分、しっかりと考えてきました。どうすれば、私は力を得られるのかをね。ただ、ぼんやりと毎日を過ごしていた訳ではないのですよ」


 力を得る為には、栄養が必要だった。だからこそ、この教会を作って村人達を信者にした。こんな規模では、たかが知れている。それでも、どんなに小さくても積み重ねれば大きくなる。時間が必要だった。辛抱強く、待ち続けた。


「面倒な真似を。しかし、神になったからと言って、不死身にはならぬ。時間稼ぎをした所で、嘘つきの貴様に助太刀してくれるような者はおるまい。わしは、貴様が倒れるまでこの槍を放ち続けようぞ」

「ハハハ、それは貴方も同じでしょう。私は、裏切り者の貴方に負けたりはしませんから」

「ほう、それはそれは頼もしい。よい眠気覚ましになってくれそうだ」


 そんな会話をしている最中にも、彼は容赦なく槍を投げ続ける。その度に、私は槍に力を発動する。この能力は、最近になって取得したもの。使いこなせている訳ではないので、かなり集中しなければならなかった。

 目を回復する余裕もなく、血は絶え間なく流れ続ける。それでも、力は使わねば負ける。神は神を殺せる。どちらかが戦闘不能になるまで、これは終わらない。そのどちらかに、私はなる訳にはいかない。最後に立っているのは、私だけでいい。


「あぁ、懐かしい。ずっと子供の体にいて、槍を握ることなどなかったからな」

「やたらと喋りますねっ!」

「誰かとこう話す機会というのが、少なくてな。特に、同等の立場の者と話すことなんてなかった。色々と話し足りぬのだよ。憎き相手であっても、懐かしさというものを覚えずにはいられないのだ」


 余裕たっぷりに、笑みを浮かべて槍を投げる。この状態では、接近して槍を奪うことも難しい。そもそも、戦うというのは私の専門ではない。舞台裏で、ひっそりと動き回る方が得意だ。

 一方で、彼は戦を得意とする。その貪欲さと経験で、数多の戦場を駆け抜けた功績を知っている。神々の間でも、一目置かれる存在だった。


「肉体を手放したわしと、肉体が壊れゆく貴様……どちらがしぶといだろうな?」

「はは……肉体を手放すなんて、徹底していますね。そこまでして、居場所を悟られたくなかったんですか」

「徹底した休養が必要であったからな。それくらい些細な問題だ。必要ならば、また作ればいい。わしくらいになれば、それくらい容易い。結構、貴様の近くにもいたのだがな。閏とかいう子供の中から、ずっと笑いを堪えていた」

「何?」


 閏といえば、確か巽様の弟ではなかったか。まだ幼いと、綴からよく聞いていた。滅多に話さぬ、奇妙な子供であると。それが、やたらに異世界から来た者と親身にしているという話を。

 それらを思い出した時、線と線が繋がって、謎が晴れていった。

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