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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十三章 描いた絵
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暗い暗イ地下

―ロキ 教会地下 夕方―

 子供向けのお話会も終わり、私は伸びをしながら階段を下って地下へと向かう。聖女の変身を解き、普段の姿に戻る。


(う~ん、やっぱりこの姿が一番落ち着きますねぇ~。さぁてと……)


 下ってすぐにあるのは、鉄製の扉。その近くには、人物判別システムが搭載された機械がある。その前に立って、顔を近付けると二回程小さな機械音が響いた。


(かっこいいですねぇ。こんな機械が、この国のこんな村の小さな教会にあるだなんて誰も思わないでしょう)


 これを作れる才能が、こんな国でくすぶっていたとは勿体ない。技術で発展している国々に奪われてもおかしくなかった。これを見つけて、引き寄せるきっかけになったクロエさんには感謝しなければ。


「確認完了、認証シマシタ」


 無機質な女性の声が響く。無事、私がロキであると認識して貰えたらしい。重々しい扉が、無機質な音を立てて開かれる。

 中は、モニターなどから発せられる光が僅かにある程度で薄暗い。私にはよく分からない機械が所せましと並べられ、窮屈に感じられる。そんな空間に、金髪の少女がただ一人で機械に向かって忙しなく指を動かしていた。それに夢中になっているようで、私には気付いていない。


「お~い、調子はどうですか~? クリスティーナさ~ん」


 大声で、彼女に呼びかけながら歩み寄る。そこまでして、ようやくこちらに気付いてくれたようだ。肩を一度震わせて、顔を私に向ける。


「あ……えっと、こんにちは? ロキさん」

「う~ん、微妙です。こんにちはと、こんばんはの狭間ですかねぇ。ここは、日が差し込まないから分かりませんよね。まぁ、どっちでもいいですけど。それより、閉じ籠ってばかりいたら体に毒ですよ。数分だけでも、外に出て日の光を浴びてみては?」


 私がここに来るように誘ってから、一回足りとも外に出ていないはずだ。監禁している訳でもないというのに、自ら閉じ籠って。クロエと共にいた時の彼女は、騒音を撒き散らすくらいの元気さがあった。今では、すっかりしおれた花のようだが。


「いい、私には外の光は眩しいから……」

「そうですか? じゃあ、システム介入型魔術の研究は順調ですか?」


 クリスティーナ=ミースター。クロエの友達であった女性。クロエが退学したことがショックで、気に病んでいた。そのせいで、ボスが興味を持ったシステム介入型魔術の研究が滞ることになってしまった。

 だから、私が彼女に近付いた。傷付いた人間というのは、甘い言葉には弱いから。私の嘘が、よく染み込む。


「お陰様で機械だけじゃなくて、人の脳波にも介入出来るようには……精度は、まだ自信はない。けど、そろそろ実用段階には来てると思う。だから、その試用出来る人が……いたら……」

「凄いですね! 友達を思うだけで、そこまでの成果がこの短期間で出せるようになるんですね!」

「あの言葉、信じてるから……」

「嘘なんてつきませんよ、私を信じて下さい。大丈夫ですよ。傷付いた人の記憶をねつ造する魔術を開発してくれた暁には、ちゃんとクロエさんに会わせて差し上げます。貴方は、偉大なる組織の十一番目になったのです。その願い叶えられますよ。だから、もっともっと頑張って下さいね。さて、手に入れた試用品を持ってきて貰いましょうか」


 楽しい。楽しくて仕方がない。こんなにもいいように扱える人間に会えたのは、いつぶりだろう。用意された箱庭で、どこまで試せるか――それを考えるだけで満たされる気分になった。

 終焉の余興に相応しい、パーティーを始めよう。その為に描いた絵を、現実に投影して見せよう。

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