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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十三章 描いた絵
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消えた謎

 守りたかった。

 守らなければならなかった。

 手本はない。

 僕とは違う種族も理解しなければならない。

 意見を聞かねばならない。

 優劣をつけなればならない。

 白黒はっきりさせなければならない。

 対等に分かり合える相手がいない。

 選ばれたのが僕だったのは何故だろう。

 特別な力などいらなかった。

 特別な立場などいらなかった。

 家族や恋人と生きていきたかった。

 普通でありたかった。

 普通は忘れなければならなかった。

 戻れない過去を忘れたかった。

 だから殺した。

 だから壊した。

 普通は切り捨てなければ。

 だって王だから。

 王を妨害する者は消さなければ。

 強くならなければ。

 間違っていない。

 王を演じなければ。

 戻れない。

 皆の元には行けない。

 独りでも怖くない。

 怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない――。

***

―アスガード村 夕方―

 混濁する記憶と意識。この思いは、僕のではない。けれど、似ている。似ているけれど、僕ではない。

 これは――前世の僕の記憶。この世界は、牢獄であると何度か聞いた。穢れた魂の堕とされる場所。どんな理由があっても、罪を犯したから僕の魂はここにある。この瞬間、堕とされた根拠がはっきりとした。


(真実だった。この世界のことも、僕のことも……)


 そして、僕の魂はまた同じ過ちを繰り返している。きっと、僕が死ぬ日が来て魂だけになった時、裁かれてまたここへと堕とされるのだろう。


(このタイミングで、完全に思い出すなんて……このタイミング? あっ!)


「リアム?」


 一気に脳に詰め込まれた膨大な量の記憶の合間を縫って、直前にあったリアムとのやり取りを思い出した。そういえば、僕はリアムと共にこの村に潜入を試みていたのだと。それで教会に目をつけて、ここからこっそり覗いていた。そこで聞こえた話のせいで、僕は僕の全てを思い出す羽目になった。


「どこへ行ったんだ? リアム?」


 記憶の蘇る最中に、身の回りで起こっていたことは把握していない。


(もしかして、リアムのことだから突っ走って中に?)


 有り得なくもない。今までのことを考えたら、その方が自然な気がする。恐る恐る中を見てみた。しかし、そこにいるのは聖女と子供達だけだった。いたら最悪だが、いないのもまた最悪だった。まだ居場所が、明らかになっているだけマシだったかもしれない。


(どこかへ行ってしまったのか? そうだ、におい……)


 混濁する意識を取り戻す為の意図もあって、リアムのにおいへと向ける。


「消えてる? それに、もう一つにおいがある。これは……あの神父のものか?」


 ここに来るまでのにおいはあった。けれど、帰りのにおいはどこにもない。そんなこと有り得ないのに。瞬間移動でもしない限りは。

 加えて、どこからか湧き出たように別の人物のにおいが発生している。どこかに移動した形跡もない。一点にしか、そのにおいは存在していない。


(神父が瞬間移動してきて、リアムを連れ去った? 何の為に?)


「――聖女様、ありがとー! 面白かったよ~」

「もうおしまいか~またやってくれる?」

「えぇ、勿論。さ、お帰りなさい。もう子供は帰る時間ですよ」


(……まずいっ!)


 見つかっても困ることはないのだけれど、変に絡まれたりしたら面倒だと思い、僕は咄嗟に飛び上がって教会の屋根に上がった。そこからも、リアムを探してみたのだが……どこからも気配は感じなかった。 

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