表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十三章 描いた絵
523/768

必ずや必ずや

―アスガード村 夕方―

 放課後になってすぐにリアムに捕まってしまった僕は、アスガード村に訪れていた。今回の目的は、教会内部のようだ。前回を踏まえて、ちゃんと状況に合った服装を用意してくれていた。だからといって、気が弾むことはないけれど。


「よし、巽行くよ」


 リアムは悪戯っぽく囁くように言うと、そろりそろりと教会の中へと入っていく。


(逆に怪しいよ……)


 もう既に頭が痛い。どうして、普通に出来ないのか。少し前まで感心していたのが、恥ずかしいくらいだ。


「リアム、普通に歩いてくれ。ここに住んでいる人は、泥棒みたいにここを訪れたりはしない。それに、その歩き方だと潜入というよりも侵入だ」

「えぇ……うん」


 そう指摘すると、彼は不満そうに忍び足をやめた。


(なんで、そんなに残念そうなんだよ……もう)


「じゃあ、気持ちを改めて進もうか……おっ、巽、巽。早く来て。なんか、子供達が沢山いるよ」


 再び進み始めた彼は、教会内を見てすぐに足をとめた。そして、手招きをして僕に隣に来るように促す。


「ん? 子供が?」


 中を見てみると、檀上では聖女が手を組んで何かを語っていた。確かに、彼女の周りには子供達が集まって静かに話を聞いている。


(あの聖女の正体は、ロキさんだったよな。これもまた、信仰心を搾取する為の活動の一環か……?)


「何を……しているんだろう」

「しーっ、巽。よく聞いて。耳を澄ませば、この位置からでも聞き取れるよ」


 気になっていた僕は言われた通り、聖女の声に意識を向けた。


「――この世界が、まだ一つだった時。地獄も天国も同じ場所にあった時。命ある者が、唯一無二だった時のお話。その世界を支配する役割を与えられた男がおりました。それが、王様です。創造主様より命を受けたのです。最初こそ、王様は皆を思いやっていました。けれども、次第に王様はわがままになっていきました。そして、王様は沢山の人を殺しました。沢山の人を傷付けました。家族や恋人でさえも」


 聞く限りでは、まだ語り始めたばかりだったようだ。何やら、興味深い話だ。子供相手に話すには、少々複雑そうな気はするけれど。

 それでも、子供達は楽しんでいるようで口々に言葉を発する。


「王様悪い~!」

「創造主様が可哀相!」

「皆も可哀相だよ!」


 そんな感想に、彼女は優しく微笑み語り続ける。


「ウフフ……ある時、そんなわがままな王様に、一人の女性が立ち向かいました。けれども、恐怖で皆を支配する王様の力を前にして多勢に無勢でした。女性は捕らえられて、剣を向けられました。しかし、それに対しても彼女は決して涙を見せることはありませんでした。そして、玉座で嗤う王様にこう言いました。『必ず、貴方は罰を受ける。他の者が与えないのなら、自分がやりましょう。奪った命の数だけ、それに相応しい罰を与えるまではこの命、何度でも蘇るでしょう。どこまででも追いかけ、必ず罰を与えましょう。必ずや……必ずや――』と。それが、英雄であり反逆者であった彼女の最期の言葉とな――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ