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我が儘な青年

―街 夜中―

 規制線の前で力なく倒れたリアムの所へ、僕は急いで駆け寄った。


「リアム!」


 ぐったりとしたままで、リアムからは返事がない。しかし、呼吸はしているから死んではない。死ぬ量の電流が流れる訳ではないので当然と言えば当然だが、くらってしまえば一溜まりもない。


「リアムってば!」


 僕はその場にしゃがみ込んで、耳元で叫んだ。こんな所で気絶して、病院沙汰なんて恥ずかしいにもほどがある。


「うっ……うう」


 すると、リアムはようやく反応を示した。目をゆっくりと開けて、ぼんやりとした様子で僕を見つめる。


「大丈夫か!?」

「規制線……あぁ、こんなことになるんだね。身を持って体験出来て感激だよ……こっちの世界は何をするにも過激だね。あぁ……魔法やら魔術があるから仕方がないのかな。これくらいのことをしないと、人をとめる手段がないから……」


 リアムは電流に触れてしまった影響でさらにおかしくなってしまったのか、自身の存在している世界を遠くから見るように言っている。


「大丈夫じゃなさそうだね……」


(ゴンザレスじゃあるまいし。それに、異世界から人が来るなんてもうありえない。だって、異世界とこの世界を繋ぐ扉は今開かれることはないし、連れて来ることの出来る存在はもう――)


 とにかく、これだけ言葉を発することが出来るのなら命に問題はないだろう。あとは、常識部分が元々あったくらいには回復するのを待つだけだ。


「さてと~……規制線の向こうに行こうかぁ。折角ここまで来たんだしね、この程度の電流……いい眠気覚ましだよ。さぁ、行こうか」

「え!?」


 リアムは、フラフラと立ち上がる。


(どうかしてる! 流石にとめなきゃ!)


 僕は、立ち上がったリアムの腕を掴んだ。すると、リアムはどうして掴むのかと言わんばかりの表情で僕を見つめる。


「駄目だよ、もし中に入ってそれがバレたりしたら……もう外からだけでいいだろう? こうなっている以上、危ないよ!」

「……どうして? どうしてそんなに嫌がるの? 俺には分からない……分からないよ。駄目だって言われたら、好奇心が刺激されて体がそれを求めるじゃないか……人間ってそういうものじゃないのかな? タミは……人間じゃないのかい?」


 そう言われた瞬間、自身の正体を暴かれてしまったような気がして力が抜けた。リアムは僕の手を振り払うと、今度は規制線をしっかりと跨いで立ち入り禁止の向こう側に行ってしまった。


(僕は……人間の格好をした――)


「っ! こんなことを考えてる場合じゃない! リアムをとめなきゃ!」


 リアムの姿はもう視界にはない。規制線の向こう側には、いくつか建物が見える。もしかしたら、勝手にその中に入ってしまったのかもしれない。


(仕方ない……こうするしか。リアムの気を引くことが出来る手段はこれだけ……)


 僕は、覚悟を決めた。体の中に眠る『彼』に呼びかけるように――

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