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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十二章 不遜な者
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事件の共通点

―保健室 朝―

 リアムの親友として、相応しい笑みを僕は向けた。


「あぁ……ありがとう!」


 彼は何も疑う素振りもなく、心の底から喜びを噛み締めた様子で強く僕に抱き付いた。反吐が出る。けれど、ここは親友としてその思いに応えなければならない。


「うん。僕は、まず何をすればいいのかな? 正義とかどうとか言っていたけど……」

「あぁ! それね。あの人……ゲインさんが教えてくれたんだけど、神様を見つけ出すには巷で話題の事件を辿ればいいって」

「巷で話題? 何それ」


 普段ニュースは見ないし、最近は黒猫探しに追われていることもあって噂話に耳を傾ける余裕もない。僕がそう問いかけると、彼は抱き付くのをやめて驚愕の表情を浮かべてこちらを見た。


「知らないの!? ほらほら、昔、一緒に事件現場を見に行ったこともあったじゃないか。化け物の奴だよ。ちょくちょくあったりもして、それでも最近は落ち着いてたんだけど、ここ一ヶ月は頻発してるんだ。でも、郊外の田舎町とかばかりだから……関心がなければ流すような事件なのかもなぁ」

「その犯人は、捕まっていないってこと?」


 変な冷や汗が流れる。もしかしたら、それは僕なのではないかと。けれど、僕の中の彼は封印されているはず。中途半端な形でしか顕現しない。その辺りを明らかにする為に、それなりに詳しそうな彼を問い詰める。


「いや……なんて言えばいいのかな。化け物は捕まってるよ。大きな図体で暴れ回るから厄介だけど、動きは単純だからすぐにどうにか出来るんだって。でもでも、こっからが凄いんだ!」

「凄い?」

「化け物が落ち着いたらね、途端に人の姿になるんだって。え~と、おじいさんもいたしおばあさんもいた。子供もいたんだって。詳細を聞こうとしても、彼らは痩せ細って衰弱し切っていてすぐに亡くなってしまうんだって。身元が明らかになってるのは、劇場での事件からみたいだけど」


 どうやら、僕が化け物となって破壊や殺戮を行っているという事実はなさそうだ。それで、少しは安心出来たけれど、不安な要素は大きい。

 リアムの言っていることが真実ならば、かつて僕の国でも一時的にあったそれが起こっているということになる。ある日、突然に人が獣のような化け物へと姿を変えた事件に。


(あの事件を起こしていたのは、十六夜のはず。この国に元の技術があったのか? 一度、十六夜は国外逃亡をした訳だし……その潜伏先がこの国だった可能性はある。でも、何故急に連続して起こり始めたんだ? あの劇場前で見た化け物の彼と関係はあるのか?)


『私が綴を変えてしまった。あいつは、今どこでどうしているんだろうか? 死んでいるという噂もあるが……私は、そうは思えない。巽はどう思う?』


 父上のあの言葉が、よりいっそう最悪の事態を想像させる。


「でも、それで迷宮入りということはないよ。最近明らかになったんだけど……彼らには共通点があったんだ!」

「共通点?」

「うん。化け物になって暴れてしまった人達はね、皆……小さな村の住人なんだって。だから、今からそこに行こう!」


 彼は恐れる様子もなく、高らかにそう宣言した。

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