表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十二章 不遜な者
507/768

全て元通りに

―保健室 朝―

 どんどん聞いてくれみたいな感じだったというのに、途端になんだこれは。異世界から来る奴は、どいつもこいつも常識がないのか? そんなに知り合いいないけど。


「成せない……成せなかった。幸せに暮らしていたかっただけなのに、戦争がダディを奪って、病気がマミィとエリーを奪った。国はテロやら紛争で荒れていた。家族の中で唯一生き残ってしまったから、俺は……国を出た。遠い親戚が、俺を拾ってくれたから」


 酷く落ち込んだ声色で、当時の状況を苦しそうに語る。先ほどまでの様子からは、想像もつかない悲しい過去。彼を狂人のように変えてしまった出来事なのか、元々なのかは分からないけれど、どちらにしても僕だったら狂わなければやってられない、そんな気がする。


「遠い親戚なのに、出来た人だった。ゼロからのスタートだと思って頑張れって励ましてくれた。学びは俺に沢山のものを与えてくれると。それはその通りで、俺は大学に通えるようになった。そこでね、巽……ゴンザレスに出会ったんだ」


 でも、彼は笑っていた。泣きそうな楽しそうな、理解するには難しい表情だった。


「彼は親切だった。入ることで精一杯で、勉強についていけなかった俺を気にかけてくれた。俺には分からなかった、人気者で優秀な彼が俺を助けてくれる理由が」

「え……ゴンザレスが? 自分から君を?」

「うん。だから、聞いたんだ。どうして、人気者の君が俺を気にかけるのかって。そうしたらね、彼は言ったんだ。『友達だから当たり前だろ』って、太陽みたいな笑顔で。それを聞いたら、凄く心が温かくなった。そして、同時に思ったよ。彼みたいになりたいと。優秀で人気者の彼のように……」


 その言葉を聞いた時、僕は昔ゴンザレスから聞いた話を思い出した。それは、ゴンザレスが嘆くように語った自身の過去。今の僕と同じように海外の大学へ通っていた際に、劣等感を抱くきっかけになった人物がいたと。


(確か、同い年の男……留学先……今更ながらリアムなのでは? 多分……いや、絶対そうだ)


 しかし、ゴンザレスから聞いていた話とは印象が真逆だった。これは、一体全体どういうことなのだろう。


「俺なりに努力して、やっと追いついたと思ったら……彼は学校を辞めてた。友達を失ってしまったことで、また家族を失ったショックがぶり返してきたんだ。また失ったんだって思って。悲しくて悲しくていっぱい泣いた。だから、神様にもっと祈ったんだ。全て元通りに、友達もいる世界で幸せのまま――終わりたいって」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ