平等にいこう
―レイヴンの森 夜―
地面に空しく突き刺さる一本の刀、それを抜き取ろうとした時――。
(来るっ!?)
複数の気配を至近距離から感じ、その場から離れた。その直後、雷が刀へと落ちる。
「なっ!?」
明らかに、魔法であった。状況的に考えて、それは残りの選抜者の誰かによって発せられたものだった。しかし、それは受け入れがたい事実であった。
(何故、魔法が……魔力を使えば、彼らにとって何かしらの不利益があるはずなのに。それに、マイケルさんが……まさか!)
『――最初に伝えたはずだ、君達は魔力を消費するような行動をするなと』
マイケルさんは確かに言った。しかし、その主語は自分を除いた「君達」。彼自身が、使わないとは言っていない。
「上等な刀だ。まさか、こんな間近で見られる日が来るとは」
それに気付いた時、さらに僕は不利な状況にあると悟った。彼らの持っている武器は一つだけじゃないということになる。人数は減ったとはいえ、僕が孤軍奮闘状態であることに変わりない。加えて、そこに魔法までも登場してくるとなると、かなり厳しいということが分かる。
加えて、彼は苛立っていた。突き刺さった刀の柄を握り、殺気立った様子で立ちはだかっている。これでは、刀を取り返すことは難しそうだ。
「――駄目、やっぱりどこにもケビンはいないわ」
「こっちにもいなかった……」
「気配が消えてしまったのは、やはり……もうこの世界には」
マイケルさん以外の人達も、木陰から現れる。どうやら、ケビンを探していたらしい。
「そうか……間に合わなかったんだね。あの状態で、ケビンをとめることは難しかった。悪いのは、私だ。皆を犠牲にしてしまったのは……私の責任だ」
「違う。最終的には自分達で判断を下したの。その時点で、責任は全員にある」
「そうだよ。それぞれ思いは違うかもしれないけど、ここにいるのは私達の意思だよ」
「哀悼の意も込めて、私達は全力で戦いましょう」
そして、彼らはマイケルさんの元へと集結し、僕を力強く睨みつけた。
(あの刀でなければ、僕には出来ない。あの形状だから、実現しやすくなるものなのに!)
何としてでも取り返さなくてはならない。その上で、彼らをこの世界から解放する。
「刀を返して貰えないですか?」
「出来ない相談だ、それは」
不敵に微笑むと、マイケルさんはその刀を引き抜く。それに合わせて、彼らは各々構える。
「一度使ってみたかったんだ。東洋に浮かぶ島の刀とやらを……低俗な者には、低俗に。平等にいこうじゃないかっ!」
刀を持って、彼は勢いよく僕の方へと飛びかかってくるのだった。




