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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第三十章 いつか手を取り合えたなら
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平等にいこう

―レイヴンの森 夜―

 地面に空しく突き刺さる一本の刀、それを抜き取ろうとした時――。


(来るっ!?)


 複数の気配を至近距離から感じ、その場から離れた。その直後、雷が刀へと落ちる。


「なっ!?」


 明らかに、魔法であった。状況的に考えて、それは残りの選抜者の誰かによって発せられたものだった。しかし、それは受け入れがたい事実であった。


(何故、魔法が……魔力を使えば、彼らにとって何かしらの不利益があるはずなのに。それに、マイケルさんが……まさか!)


『――最初に伝えたはずだ、君達は魔力を消費するような行動をするなと』


 マイケルさんは確かに言った。しかし、その主語は自分を除いた「君達」。彼自身が、使わないとは言っていない。


「上等な刀だ。まさか、こんな間近で見られる日が来るとは」


 それに気付いた時、さらに僕は不利な状況にあると悟った。彼らの持っている武器は一つだけじゃないということになる。人数は減ったとはいえ、僕が孤軍奮闘状態であることに変わりない。加えて、そこに魔法までも登場してくるとなると、かなり厳しいということが分かる。

 加えて、彼は苛立っていた。突き刺さった刀の柄を握り、殺気立った様子で立ちはだかっている。これでは、刀を取り返すことは難しそうだ。


「――駄目、やっぱりどこにもケビンはいないわ」

「こっちにもいなかった……」

「気配が消えてしまったのは、やはり……もうこの世界には」


 マイケルさん以外の人達も、木陰から現れる。どうやら、ケビンを探していたらしい。


「そうか……間に合わなかったんだね。あの状態で、ケビンをとめることは難しかった。悪いのは、私だ。皆を犠牲にしてしまったのは……私の責任だ」

「違う。最終的には自分達で判断を下したの。その時点で、責任は全員にある」

「そうだよ。それぞれ思いは違うかもしれないけど、ここにいるのは私達の意思だよ」

「哀悼の意も込めて、私達は全力で戦いましょう」


 そして、彼らはマイケルさんの元へと集結し、僕を力強く睨みつけた。


(あの刀でなければ、僕には出来ない。あの形状だから、実現しやすくなるものなのに!)


 何としてでも取り返さなくてはならない。その上で、彼らをこの世界から解放する。


「刀を返して貰えないですか?」

「出来ない相談だ、それは」


 不敵に微笑むと、マイケルさんはその刀を引き抜く。それに合わせて、彼らは各々構える。


「一度使ってみたかったんだ。東洋に浮かぶ島の刀とやらを……低俗な者には、低俗に。平等にいこうじゃないかっ!」


 刀を持って、彼は勢いよく僕の方へと飛びかかってくるのだった。

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