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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十九章 選抜者は森に集う
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死者を探して

―街 昼―

 開かずの扉を魔法で収納し、一旦屋敷に戻ることにした僕は街を歩いていた。


(この魔法は便利だけれど、継続して使うから消耗が激しいんだよな。だから、食事はちゃんとしないといけないんだよね)


「はぁ……」


 部屋に置いておくのも不安だし、結局の所、自分で持っておいた方が安心出来る。今までは奇跡的に取られなかっただけ。負担になるけれど、そこはもう我慢するしかなかった。


(それにしても……だ)


「何なのよ、この蝶!」

「いつの間にか、家の中にまでいるぞ!」

「この蝶々、捕まえられないよぅ」

「しっしっ、あっちへ行け!」

「どこからこんなに出てきたんだい、至る所にいるわ!」


 街中は、騒然としていた。無理もない。何故なら、不気味な黒い蝶が周辺に大量に飛んでいるのだから。


(少し前までは飛んでいなかった。やっぱり、あそこで魂の脱走騒動があったせいで……?)


 この蝶は、コットニー地区にいたものだ。あの独特な女性がそれを操り道を作って、魂を冥界へと運んでいる時に見た。しかし、その道が突如と壊れ、女性はぶつぶつと呟きながら怒りと焦りを露に消えていった。

 僕の勘違いでなければ、恐らくそれが原因だろう。


(脱走したのは……複数なのかな。結託とか言ってたし、一人ではないよね。でも、その中にドールはいない……と思いたい。だって、もう彼女には脱走する理由なんてないはずだから。声が朗らかに変わっていくのを確かに感じたんだから)


 神かそれに等しい存在の目を盗み、その策略から逃れるなど只者ではない。そんな者が、あそこにいただろうか。コットニー地区に住む者は皆支配されて、それを当然のことのように受け入れていた。諦めていた。カラスもマフィアも。そんな彼らが魂だけになった所で、思い切りが良くなるとは思えない。


(しかも、アーリヤよりも上の存在だ。歯向かうなんて度胸が彼らには……あ、いや……)


 その時、ふと思い出した。コットニー地区で死んでしまったのは、マフィアやカラスだけではない。アレンさん、クロエや選抜者達もあそこで命を落とした。


(集団でやらかすとしたら……巨大な存在を欺けるほどの連携が取れている集団があるとしたら……)


 まさか、と思った。単体よりも集団である方が強力である者達を僕は知っていた。


(仮にそうだったとして、こんなことをする理由は? 彼らは――選抜者達は、何をしようとしているんだ? そんなにも強い思いがあるのか? もしくは、死への自覚がない、とかだろうか?)


 考えても考えても分からない。いや、考えても無意味かもしれない。僕には無関係だ。選抜者がどうなっていようと、もはや死者は僕の引いた線の内にはいないのだから。


(こんなことより、黒猫がどこにいる可能性が高いかを……)


「ぅっ!」

「ひゃっ!」


 考え事をしながら歩いていると、僕は何かにぶつかった。

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