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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十八章 僕の罪
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魂は結託して

―コットニー地区 昼―

(これで、ドールの気は晴れたのだろうか?)


 天へと続く黒い道の先にあるのは、天国か地獄か。冥界という場所の詳細はよく知らないが、死者の魂が行き着く先だということは何となく分かった。


(だけど、きっと……犯した罪が許されることはない。その存在が創作でなければ、行き着く先は地獄だろう。命令されていたとはいえ、実行したのは彼女自身なのだから。奪った事実は変えられない。それ相応の罰を、受ける……)


 ロキさんが言っていた、この世界そのものが牢獄であるという話。もしも、それを事実だとして捉えた場合……罪を償うべき場所で罪を犯したということになる。僕の国の法では、牢獄で違反となる行為をした場合は刑期が延びたり、罰がさらに重くなったりする。

 そういった類のものが、この世界の規則としてあったら――また、ドールの魂はここに堕とされてしまうのだろう。かつて、犯した罪を知らぬままに償わなければならなくなる。


(僕も、いずれ……いつになるかは分からないけれど)


 僕の魂は穢れだらけ。天国などに行けるはずがない。地獄で苦行を重ねて、またこの世界に戻される。罪人として。


(あぁ……もう、罪を重ねるのは嫌だなぁ。本当は誰も殺したくないし、傷付けたくもないのに。でも、やっぱり……僕には出来ないのかなぁ)


 これ以上、生きても過ちを繰り返してしまうだけ。己の弱さのせいで。願うことなら、蝶にこの道の先へ連れて行って欲しい。

 けれど、それではいけない。僕の為に、自らの命を犠牲にしてしまった人達に示しがつかない。それに、無理にここで逃げ出そうとしたら、呪いがどのような形で発動してしまうかが分からない。だから、ぐっと堪えた。心の奥底へ、逃げ出そうとする弱い感情を押しやって。


(この命で生きることこそが、まずは僕が出来る償い――)


 道を眺めながら、そんなことを考えていた時だった。突如として、その道の一部が爆発音と共に崩れた。粉々になった蝶が、飛散するのが見えた。


「何事だっ!?」


 これには、着物の女性も予想外だったようで取り乱していた。すると、彼女の耳元にすぐに数匹の蝶が飛んでやってきた。


「……馬鹿な、魂同士が結託し逃げ出しただと!? この私が作った道を……罪人風情が!?」


 その動揺は大きな苛立ちとして、少し離れた場所にいた僕にも伝わってきた。話しかけるのが恐ろしかったが、ここで臆するようでは情けない。意を決して、彼女に言葉をかけた。


「あ、あの……何かあったんですか?」

「失態だ、これは。まさか、この醜態を罪人の目の前で晒すとは。見て聞いた通り、魂の脱走を許した。この私が直接動いたにも関わらず、だ。これでは……あの方に示しが……! くっ、蝶よ! ここは、任せる!」


 顔を怒りで真っ赤に染めて、彼女は蝶の姿となり遠くへと羽ばたいていった。

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