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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十八章 僕の罪
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半分の真実

―保健室 朝―

 粗暴な女性と共に、僕は保健室へと移動した。


「おらよっ!」

「うわ!?」


 保健室へと足を踏み入れた瞬間、彼女は強く僕の背を蹴り飛ばした。それによって、僕の体は完全に保健室の中に入った。


「し~っかり休めよなァ。じゃ~な」


 そして、彼女はドアを荒々しく閉めて姿を消した。


「休めって言われても……ん?」


 保健室の中に視線を向けた時、床に紙が散乱していることに気が付いた。


「これは……新聞?」


 その中の一枚を手に取って、内容を確認してみた。英語の読み書きが難なく出来るようになって、本当に良かったと思った。


『娘が、父親を惨殺。娘は逃亡中』


 中々に、ショッキングな事件が大見出しとして載っていた。


(あ、でもこれ……日付はかなり前だ。ちょうど、僕の記憶にはない範囲……)


 父親を肉片になるくらいにまで惨殺し、娘は逃亡し続けているらしい。そんな残忍な事件があったこと、僕は知らなかった。

 そして、内容をさらに読み進めていくと、そこには僕の知る人物の名があった。


『マーク=アトウッドさんの娘、アリア=アトウッドに殺人容疑で逮捕状を請求し、現在行方を追っている』


「アリア……が? そんな、馬鹿な……」


 あまりに大き過ぎる衝撃に、手が震えた。あの優しくて、温かな彼女が父親を殺すなど想像だに出来ないからだ。僕は何か、悪い夢を見ているんじゃないかとさえ思った。


『人が多い方が、私的にはいいから……』


 刹那、脳裏をよぎったアリアの表情。悲しそうに俯き、僕が気まずさを感じたあの時のことだ。聞くに聞けず、あのまま僕は舞台に上がることになってしまった訳だが……。


(人が多い方がいい理由……人を隠すには、人だからなのか? じゃあ、本当に……)


 鼓動が大きくなっていく。心臓を、口から吐き出してしまいそうだった。彼女は、僕を友達だと言った。僕は、彼女に真実を明かした。

 けれど、彼女は――。


(待て、焦るな。ここに書いてあることや、彼女の見せた言動だけが真実だとは限らない。もっと、情報が……情報を! 情報を比較して、吟味するんだ)


 そう自分に言い聞かせて、気持ちを落ち着かせる。そして、床に散乱する他の新聞も手にとって目を通した。


『容疑者、未だ逃亡中。近隣住民、不安の日々』

『募る警察への不信感、逃亡する犯人、事件解決はいつ?』


 しかし、どれだけ見てもあるのはアリアが犯人前提の記事ばかりだった。記者達は、知ったことを記事にしているだけだから当然かもしれないけれど。


「ん……」


 何かもっと別視点から見たような記事があればと、ある新聞を裏返しにした。すると、小見出しではあったが気になる文字列が目に入った。


『ずさんな捜査? 人の所業とは思えず』


 そして、そこには現場となったであろう場所の写真があった。恐らく、ここがアリアの家、つまり現場となった場所。


(半壊しているじゃないか。魔法を使って壊したのか? 証拠隠滅の為? でも、そうだとしたら父親の遺体を残している時点で不自然だ。というか、突然建物が半壊したら余計に怪しいと思われるような……どういうことだ?)


 父親を肉片になるくらいにまで惨殺し、逃亡。その際に建物を破壊すれば余計に目立つし、こっそり殺すのであれば惨殺した遺体も処理するべきだろう。やはり、違和感しかこの事件からは感じない。


 興味を引かれて、僕は他とは違うその小見出しの内容を読んでみることにした。

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