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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十六章 黒猫はいずこ
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おまけでいいから

―自室 朝―

 龍と出会ったというのが嘘のように、僕はいつも通りに目覚めた。


「もう朝か……」


 学校が始まるという連絡はない。いわゆる、二度寝というものに挑戦出来るチャンスではあった。けれど、僕は急いでやらねばならぬことは沢山ある。

 僕は眠い目をこすりながら、ベットから降りて部屋を出る。


(そういえば、アリアはもう起きているだろうか? というか、どこで寝たんだろう? 多分、一階なのかな? 匂いを辿ればすぐに分かるけど……変態みたいで嫌だな。一応、アルモニアさんを探した方が……)


 色々考えながら歩いていると、突然、何者かに肩に手をかけられた。


「うえっ!?」


 気配も何も感じさせず、ここまで距離を詰められるなんて不覚だった。ここにいる人物なんて、限られている。あの僕を完全に舐め上げているアルモニアさんか、アリアか――どちらであるのかを確認しようと振り返った。すると、そこには引きつった笑みを浮かべるアリアがいた。


「ご、ごめん。びっくりさせちゃって……その、気付いて貰おうと思って。存在感ないから、私……」

「え? あ、いや……僕の方こそ、気付かなくてごめん。どこにいたの?」

「部屋の前で待ってた……アルモニアさんに、そこにいるって聞いたから」

「部屋の前にいたのか? 色々考え事をしてたから、そのせいで気付けなかったんだと思う。それより、よく眠れた?」


 まさか、目の前を一切気付かずに通り過ぎてしまうなんて。匂いや気配を全く感じなかった。とんでもない女性だ、彼女は。内心かなり衝撃を受けながらも、僕は話を逸らす。


「う、うん。まさか、眠っちゃうなんて。ここのベット、すっごくふかふかで気持ち良かったよ。永遠に眠れちゃいそうだったもん」

「ハハ、それは良かったよ」

「そ、それでね! 巽!」


 すると、彼女は手を強く握り締め、意を決したように言葉を発する。


「一緒に、私と……街に行かない!? ほ、ほら学校もまだ始まらないし! 折角だから、その……巽と遊びたいなぁって! あ……でも忙しかったらいいの。巽は、色々あるだろうし。昨日、私のわがままには付き合って貰ったから。だけど、もう一日だけおまけでって……思って……」


 最初こそ語気が強かったものの、次第に自信を失ったように萎んでいく彼女の声。


(遊びにか。僕は黒猫を探したい。でも……彼女には恩がある。それは、一朝一夕で返せるようなもんじゃない。それに、街のことを知れるのはいいことだ。結果的に、黒猫を探す効率も良くなるだろう。僕は、あまり詳しくないし……うん、決めた)


「僕なんかで良ければ付き合うよ。ちょうど、街を見て回りたいと思っていたんだ。色々、教えて欲しいな。でも、朝御飯は食べて行こう」


 彼女の表情が、瞬く間に明るくなっていった。


「う、うん! 行こう!」


 そして、僕らは朝御飯を食べてから街へと向かうことになったのだった。

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