表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十五章 龍の力を我が物に
394/768

憂鬱とアリアを抱え

―レイヴンの森 夜―

 目も開けられぬほどの強風にさらわれて、僕は再び地面に叩き落される。また、受身を取って何とか危険を回避する。そして、目を開けると――再び綺麗な花園の中に僕はいた。すぐ隣で、花に囲まれながら眠っているアリアの姿も確認出来た。


(良かった……彼女は無事か)


 どうやら、あの風にさらわれてしまったのは僕だけだったらしい。太平の龍の力、一体どれほどのものなのだろう。自然を操るだけでなく、人を眠らせることも出来るのだろうか。


「……アリア?」


 とりあえず、声をかけてみたのだが――彼女は起きる気配はなかった。ぐっすりと眠りの世界に入り込んでしまっているみたいだ。


(まぁ、起こすのも悪いか。でも、朝までここにいるのはなぁ……帰らないとアルモニアさんが絶対にうるさいし、面倒なことが増えそうだ。それに、黒猫も……)


 ジェシー教授改め龍が、黒猫の行動の示す先に僕らの求めているものがあると言った。不幸を見届け、干渉しないという最悪の行動をしたら、だが。


(優しさだけで、国一つを動かすことは出来ない。そんなこと、分かってる。でも、こんな形でその残忍さを証明することになるなんて)


 憂鬱な気持ちとアリアを抱えながら、僕はゆっくりと飛び上がる。先ほどまで忘れていたが、僕は魔法で空を飛べるのだった。こうやって空を飛べば、不慣れな場所でもすぐに見渡せるし脱出出来る。


「はぁ……」


 屋敷を目指して、色々と考えながら空を飛んでいた。


(黒猫ってのは、朝に出会ったあの猫かな? いや、どうだろう? 黒猫って何匹いるんだろう? 黒猫ってこの世界に一匹って訳じゃないよな。でも、あの黒猫……何か不思議な感じだったよな。言葉も理解した上での行動をしてるみたいに見えたんだよな。一番可能性があるとしたら……あの子だったり?)


 彼は簡単に言ってくれたけれど、望んだ通りに出来るものなのだろうか。たった一匹の黒猫が、本当に僕を導いてくれるのだろうか。


(平和の為の犠牲、過程は関係ない。大事なのは結果、か。本当、太平の龍が言ったこととは思えないな)


 見届けろ、そう彼は言った。きっと、彼は今までずっとそうしてきたのだろう。でも、一つだけ思うことがある。

 もしも、選抜者達の不幸を傍を見届けろと言われたら――彼は出来たのだろうか。死に行く彼らに対して、救うことが出来るのに何もしないということが出来るのだろうか。しかし、もう彼らはいない。だから、尋ねることは出来なかった。


(嗚呼、見えてきた)


 あっという間に、やたら大きな屋敷が姿を現す。空を飛べるというのは、本当に楽だ。歩きや走りとは、全く違う。


(あ、明かりがついている。やっぱり、起きてるよね。はぁあ~絶対に怒られるな。はぁ……)


 憂鬱な気持ちになりながらも、僕は屋敷前にゆっくりと降り立ち、門番達に挨拶をして中に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ