君を知りたい
―レイヴンの森 夜―
僕の決意の告白から、しばしの間静かな時が流れた。肝心のアリアの反応は、無だった。いや、予想の斜め上の僕の告白に硬直していると言った方が正しいのかもしれない。
彼女の反応は、至極当然だ。今まで嘘をつきまくっていたけど、本当のことを言います。実は王でしたなんて言われて、急にすっと受け入れられるはずもない。それをやったのは、この僕だけど……。
(どうしよう!? やっぱり、話が唐突過ぎたかな? あぁ! でも、もう言ってしまったし……変な奴だと思われているかもしれないっ!)
後悔してももう遅い。言葉はもう既に口から発せられ、彼女の耳に届いてしまったのだから。
「あ……これは、嘘じゃないよ。本当に、僕は……王という立場で、それをずっと隠してて。でも、君には嘘をつきたくなかったっていうか……唐突過ぎて、頭に入ってこないとは思うんだけど」
沈黙を切り裂こうと、僕は再び口を開いた。だが、恥ずかしさと緊張で頭が真っ白になって上手く言葉を選ぶことが出来ない。しどろもどろになって、自分が何を言っているのかよく分からなくなる。
「ご、ごめん。急にこんなことを言っても、は? って感じだよね。でも、本当に本当なんだ。嘘じゃない。この国には、忌まわしき技術を知る為に来て……その……」
(あぁ! 目的なんて、彼女に言ってどうするんだ!? まずは、信じるに足る証拠を……証拠? どこにそんなものがあるんだっ)
己の準備不足と想像力の低さに、自己嫌悪に陥る。どんな言葉を紡ぐのが正解なのか、思考がゆっくりと停止していく――そんな時だった。
「そうだったんだ。なるほど、だからかな」
「……え?」
アリアの顔には、引きつった笑みが浮かんでいた。不器用だけれど、その笑顔は彼女の心からのもの。僕の言葉を信じてくれている、優しい笑顔だと分かった。その表情を見て、緊張の糸がゆっくりと解けていくのを感じた。
「巽って、他の人と何か雰囲気が違うなぁって。立ち振る舞いとか……何でだろう? って思ってたんだけど、そういうことだったのかな? びっくりしたけど、そうなると納得出来るかも」
「信じてくれるの?」
「当たり前だよ。嘘を嘘だって言えて、本当のことをちゃんと言えるのって凄いことだよ。私には……出来ないな」
アリアの言葉に、僕は救われた。嘘つきの僕を見下す所か、褒めてくれるなんて。その器の大きさには、感服せざるを得ない。
「ありがとう……」
安心感に包まれ、自然と笑みがこぼれた。
「えっと……私ばっかり喋っちゃったし、今度は巽の話をいっぱい聞かせて? 王様ってどんなことするのかとか、巽の国についてとか……とにかく、巽のことをいっぱい知りたいなぁ」
「う、うん!」
友達というものが、あまりよく分からない。見たり聞いたりしたままを、実践しているだけ。でも、きっといつかそれを意識しなくても出来る日が来る。自然に、皆のようになれる。そう信じ、僕は彼女にゆっくりと真実を明かしていった。




