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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十四章 悪夢の終わりに
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月光に照らされて

―レイヴンの森入り口 夜―

「――巽? 大丈夫?」

「え!? あ、あぁ……ごめん」


 いつ切り出そうか、どういう言葉を使うべきかと悩んでいる間に、気が付いたらレイヴンの森へと到着していた。


「もしかして、本当は体調が悪いとか!? 無理してここに来てない?」


 アリアの瞳に、心配の色が宿る。


「いや! 全然大丈夫だよ。ちょっと色々考えてて……」

「本当? それならいいんだけど。ずっと黙ってるから……どうしたんだろうって思っちゃった」


 彼女は安心したように、胸を撫で下ろす。


「心配させてしまったみたいだね。僕は、この通り元気だから」


 一人の世界に、すっかり入り込んでしまっていた。初っ端から、心配させてしまうとは情けない。僕は体調不良ではないということをアピールする為、力強く一度胸を叩いた。

 魔力を激しく消費してしまったので、走り回れるほどの元気はないが、普通に日常を過ごすことは出来る。


「良かったぁ。でも、無理はしちゃ駄目だよ」

「心配し過ぎだよ。ほら、行こう」

「う、うん!」


 アリアは頷いて、森の中へと入っていく。僕も、それに続いた。そして、森の中に一歩、足を踏み入れた瞬間である。


(何だ? この強大な力は……)


 今までの森の雰囲気とは違った。空気ががらりと変わり、まるで別世界にでも訪れたかのような妙な気分だ。入り口手前では、何も感じなかったのに。本当に入った瞬間だ。


「ねぇ、アリア」

「うん?」

「いつ聞こうかなって思ってたんだけど、ここには一体……何の用があって?」

「ウフフ、きっと驚くよ。その場で驚いて欲しいから、今は内緒」


 彼女は顔だけをこちらに向けて、引きつった笑みを僕に向ける。満月がその不気味さをより引き立てているので、少し勘弁して欲しい。

 この森は木々が生い茂っているが、空全体を覆い隠すほどではない。それが、この森を幻想的に引き立てる。木々の間から見える、星々や満月が実に美しかった。


「驚くようなものがあるの?」

「うん! もうすぐだよ!」


(不思議で強大な力を感じるし……驚くようなものが、一つや二つあってもおかしくはないか。どんなものがあるのかな?)


 彼女の導く先、そこには一体何があるのだろう。自然と好奇心をくすぐられる。少し前まで、真剣に悩んでいたことすら忘れて、これから起こることに夢中になった。久しぶりに明るいことで、心がいっぱいになった。

 そして、ついに彼女の足がとまる。そこは、少し開けた場所だった。急いで、僕は彼女の隣へと駆け寄る。


「――っ!?」


 あまりの美しさに衝撃を受け、言葉が出なかった。


「ね! 驚いたでしょう?」

「あぁ……」


 目の前に広がっていたのは、その開けた空間いっぱいに咲き誇り、自ら発光する色とりどりの沢山の花々。そして、その花達を悠然と構える月が照らしていた。月光も花の光も、自己主張をしながらもお互いの美しさを引き立てていた。神秘的という言葉が、ぴったりだった。

 そして、その神秘的な美しさは――傷付いた僕の心を自然と癒してくれた。

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