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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十四章 悪夢の終わりに
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透き通る風に身を委ね

―屋敷 夕方―

「はぁ……」


 結局、僕は一人で屋敷内を掃除していた。最初の内は、アルモニアさんもグチグチ言いながら掃除をしていたのだが……その時間、およそ二十分。何か静かになったと思ったら、クロエの部屋にあるベットで当然のように眠り始めていた。何をしても起きないので、一人でやることを受け入れるしかなかった。


(何の為のイリュージョンだよ。お陰で、クロエの部屋と玄関しか掃除が出来なかった……)


 忙しい時に限って、時間はあっという間に流れていく。まぁ、忙しいからあっという間なのだろうけれど。心の準備も、その他必要な準備も全く出来ていない。埃にまみれたこの姿で、アリアに会いに行くなんて出来ない。


(もう外もかなり暗くなって来てるし、仕方ない……今は、とりあえずここまでにしておくか)


 元々、一人で出来る量ではなかった。必要な部屋の掃除すら終わらなかったことが、かなりショックだ。眠り姫の責任も一部ある。


(お風呂に入りたいけど、どこにあるか分からないし……外で服をはたいて、風で汚れを吹き飛ばすとするか)


 本当はお風呂に入って、気分転換をしたかった。でも、場所も分からないし、場所が分かったとしても放置された風呂場をすぐに使うことは難しいだろう。時に、妥協も必要だ。


(彼女は、ずっと眠り続けるのかな? それはそれで、どうなんだろう? 監視者だって言ってたのに。ま、別にいいか。下手に行動を見られ続けるよりは……)


 あのアルモニアさんが、監視役に向いているとは思えない。それに、監視されるのもあまり良い気分ではないし、撒けるものなら撒きたい。干渉はしないのかもしれないが、一挙手一投足を見られ続けるのも嫌だ。彼女に気付かれないよう、こっそりと向かうこととした。


(後でバレたら、面倒かな? まぁ、適当に受け流しておけばいいか)


 僕は、ゆっくりと玄関のドアを開けて外の空気を吸い込む。中のどんよりとした空気とは対照的に、透き通っていて洗われるようだ。


「ふぅ……」


 深呼吸を終えた後、音を立てないようにドアを閉め、その場で服についた埃を払った。そして、待ち合わせ場所に向かおうと一歩足を踏み出して、あることに気付いた。


(ここから、学校って……どうやって行くんだ!?)


 彼女のイリュージョンによって、僕はここまで来た。つまり、道のりが分からない。そのことから、今の僕に学校に一人で辿り着く方法は一つだけだ。


「仕方ない、か」


 瞬間移動をする他なかった。アーリヤの力さえあれば、楽に移動出来たのに。瞬間移動は、魔力の消費が激しい。本来は肉体にも負担がかかる。僕の場合、肉体への負担は一切ないが、魔力への影響はそれなりにある。彼女と会う前に、疲れてしまうことになるが――その場合、アルモニアさんを連れて行くのと同じだろう。

 僕は意を決し、目を閉じる。そして、両手を広げ、透き通る風に身を委ねるようにして――。

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