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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十四章 悪夢の終わりに
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組織の裏側

―屋敷 昼―

「――組織の者達は、実力だけで序列されている訳じゃない。宿す龍の力の危険度や、侵食度でも判断してるの。序列に属さない者達は、後から組織に加入することを望んだただのカラスの子がほとんど。でも、まぁ極稀に……ボスが龍の力を宿した者をスカウトしてくる時もあるんだ。あの研究所の崩壊のゴタゴタで、こっそり脱出した者達も何人かいたみたいだし。でも、後から来ると制御出来ない子が多い。だから、残酷だけど……ボスは安らかな死を与えた。でも、組織から逃げた子もいたのよね。きっと、地獄を見ながら死んだでしょうけどね」


 この国の裏側で、静かに起こっていた事件。あの白髪の男がやったこと、もしかしたらそれは善意だったのかもしれない。けれど、それによって幸せを引き裂かれた人達がいることも事実。脳裏によぎった、あのレストランでの出来事。

 マシューさん達は種族を超えて、幸せに暮らしていた。血の繋がりなどなくとも、彼らは間違いなく家族だった。僕に、恨み辛みをぶつける筋合いがないことは分かっている。けれど、許せない。仲違いさせ、最終的に自死にまで追い込んだ彼のことを。

 

「そして、序列に属する私様より下の子達は、皆……ギリギリのラインで無意識ではあるけれど自我を保っていた。ちょっとした衝撃で、あの子達は壊れてしまう危険があったの。壊れるのは痛くて、怖い。だから、ボスは瞬殺し、カラスとして死ねるようにしていた。今は忙しいから……他の子が代わってやってるけど。アシュレイやクロエは組織を裏切った。だから死に方については、気に病むようなことじゃないんだけど……ボスは滅茶苦茶落ち込んでてさ。だから、貴方が場を盛り上げるようなことをしてくれると嬉しいわ。というか、私様に情報を流すことを命じた時点で、遠回しにそう言ってるのよね」


(どうして、僕が……あんな男の為に元気付けてやらないといけないんだよ。あんな奴の思うがままになってたまるものか)


 沸々と湧き上がって来る怒り。なんて傲慢な男なのか。この国に生きる人々は、あいつの道具なんかじゃない。そして、僕はあいつの思い描く舞台の上で踊る道化じゃない。


「……私様的には、貴方は今まで殺されていった子よりも危険だから、野に放しておくべきじゃないとは思うんだけどね。ま、あいつのやらかしてくれた封印のお陰で化け物みたいになって暴れ回る危険はないけど。さっきみたいに、傍から見たらヤバイ人にはなっちゃうのよね。体にも負担が大きくなる」

「その封印は、解けないのですか……」

「解けないわね。元々、忌まわしき技術についてはマーラが考案者な訳じゃないし。流れ着いた知識と技術を使って、実験を繰り返していただけ。本来の考案者は、貴方に封印だけ施して……ボスに殺されちゃった訳で。コントロールするつもりだったんでしょうね。暴走しそうになったら、額に刻んだ印が反応して抑え込むっていう仕組み。封印の仕組みは分かるけど、それを安全に解く一番の方法が分かんない。生け捕りにしてくれていたら……って思うけど、まぁ無理よね。封印をかけた張本人は、もうこの世にいないから。だけど、希望はある。封印というものは、とても脆い。ちょっとした衝撃で、サクッと解けてしまうものもある。特に生物にかけたものはね」


 アルモニアさんは半笑いを浮かべて机から降り、僕の前に立った。


「何ですか?」

「何ですか? って……貴方、思っていることが全部顔に出ちゃうタイプでしょ? 苛立ちオーラ半端ないんだけど。ま、苛立つのは勝手よ。だけど、無駄。貴方は、とっくに手のひらの上。私様と一緒にレールの上で、ショーを楽しもうよ」


 そして、彼女は僕の前髪を上げ額に手を置いて、柔らかな笑みを浮かべる。


「レールの上……アルモニアさんは、それでも満足なんですか」

「レールのない人生を歩んだことないから。道なき道を開拓するなんて、怖いもん。用意された世界の中で、羽目を外して享楽に耽るのも一興よ。良かったら、普通のギャンブルでもしない?」

「しませんよ。遊んでいる暇はないんです。さっきの立派なイリュージョンで、掃除も楽々終わりそうなことが分かりましたし。ちゃんと掃除はやって貰いますよ。後、邪魔です」


 僕は、彼女の手を払い除けてクロエの部屋を出た。夜には、アリアに会う約束がある。そこで、僕は真実を告白しなくてはならないのだ。呑気に遊んでいる時間は、これっぽっちもない。

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