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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十三章 決戦
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実力だけが物を言う

―アーリヤの邸宅 夕方―

 それを聞いて、美月はその身で鎖を全てかわし、僕から距離を取り警戒心を向ける。


(余計なことを!)


「貴様……どこまで、私の邪魔をするつもりだ!」

「きゃうっ!?」


 アリアを縛る鎖に力をこめると、苦痛に顔を歪ませた。話せなくなるくらいにはしたつもりであった。息の根をとめようと思ったら、その前に美月達が来てしまった。血の臭いで勘付かれては困る。だから、鎖で力を奪い気絶させていたのだが――気力の何たる恐ろしいことか。


「こんなこと……もう、やめて。タミ、目を覚まして……」

「貴様は化け物か何かか? よくもまぁ、こんな状況で楯突こうと思ったものだ」


 既に話せるような状態ではない、一体何がアリアをそうさせるのか。僕には、到底理解の及ぶ範囲ではない。


「どこの馬の骨としも知らぬ奴の命令に従うつもりなど、殊更ない」

「じゃあ、血の繋がりのある私の命令には従ってくれるかしら。さっさとその二人を自由にしなさい」

「愚問だな。語弊があった。私が従うのは、アーリヤ様のみ」

「あっそう。というか、私と込み入った話がしたいんでしょ? なのに、また英語になってるわ。それとも、もう終わり?」

「外野がうるさい。だから、殺しておこうと思ったのだ。しかし、感情的になり、またもや見失ってしまう所だった。惑わされてはいけない。どうせ、後ろ二人は大したことない。一番邪魔者をここで、一対一で排除した方が有意義で効率的だ。申し訳なかった、さぁ続きを始めよう」


 そして、僕は魔法で忍ばせていた剣を取り出す。魔法や魔術は効果がない、鎖も見切られている。ならば、剣で戦うしかない。アーリヤ様の力も魔力もないこの剣では、力不足かもしれない。実力だけでしか、立ち回れないのだから。

 けれど、それは同時に美月に対等さを強いることになる。吸収された魔力を全て消費させれば、刃物だけの実力が物を言う戦いになる。ナイフの良さを生かすことが出来ないようにするには、これが最善だ。


(肉弾戦では、圧倒的に不利。どれだけ美月が鈍っても、弱っても僕に勝ち目なんてない。けれど……剣を使った戦いならば、可能性を広げることが出来るかもしれない。まずは、美月とナイフを切り離すことを考えよう。上手く行けば、アーリヤ様の力でとどめを刺せばいい。それに、ここには僕だけじゃない……ドライアドさんだっているんだ)


 気配は全く感じられないが、どこかでこの戦いを嗤いながら見ているのだろう。クロエを殺さず、吊るすだけで生かしているのだ。予期せぬ来客、部屋に入って来たら二人共殺せと言ったのに。だから、こんな面倒なことになっている。


(美月は、平然と僕に刃を向け……クロエは逆さで顔を真っ青にさせている。協力してくれると言ったのに、あれは嘘だったんだろうな。僕を蔑む為に、アーリヤ様に役立たずだと証明する為の……)


 そう考えると無性に腹が立った。この怒りを、完全に八つ当たりだが目の前の美月に向けるとしよう。


「何はともあれ、ここでお前は終わりだ」

「姉に弟が勝てるとでも思っているのね。浅はかだわ。思い知らせてあげる、姉の偉大さと力強さを!」

「昔とは違う。私は……必ず、この剣でお前を斬る!」


 そして、僕は力強く地面を踏み切った。

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