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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十三章 決戦
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三つの人格

―アーリヤの邸宅 夕方―

 日の光すらほとんど差し込まぬ、真っ暗な部屋で僕はただ一人、不自然に置かれた玉座に腰を下ろしていた。


(こんな物、誰が用意したんだ?)


 彫刻もしっかりなされていて、ただの模造品ではないようだ。しかし、そんな高価な物を置く所にしては、かなり埃臭かった。それに、玉座以外の物は何一つ存在しなかった。

 ここは一体何の部屋で、何の為にあるものなのか――ただ、ここで待つよう言われた僕には分からなかった。


(まぁ、些細なことか。それにしても、退屈だな)


 外で何かが起こっているのは感じるが、実際に目では見えないのでもどかしい。この部屋には、窓すらない。だから、全て想像するしかない。


(このままここで、来るか来ないかも分からない時間を待つのは本当に苦痛だ)


「タ、スケテ……キング」


 そんなことを考えながらぼんやりと時間を潰していると、とても苦しそうなドールがふらふらと黒い空間から現れた。何やら様子が変だ。真っ黒なその体が、誰かの血で真っ赤に染まっている。

 しかし、彼女は人形だ。その体内に血は流れていない。


「どうしたの? どうして何も持たずに、こんな所にいるの? ドール」


 彼女が使命を果たしたという証明を持たずにここにいる理由で、考えられることは二つ。彼女が使命を果たしたか、ある程度の危害を与えた上で使命を果たす前に逃亡したかのどちらか。あんな集団でも非力だった者の一人に負けるなど、あってはならぬことだ。


「オ姉様ガ、死ンデ……殺シ」

「は? フフフ、何を言っているの? まさかとは思うけど、おめおめと逃げ帰ってきた訳じゃないよね?」

「死、死、死……ア、アアアぁぁぁ」

「――この人形に何を言っても無駄だ。ついに、壊れてしまったようだからな」


 すると、嘲笑を浮かべるドライアドさんが僕の隣に現れた。


「ドライアド……さん? どうして、ここに」

「ふん、お前には関係ない。それにしても、珍しく謙虚な態度だな。ゴミ共がいないからか? 立派な演技力だ。しっかりと言われたことばかりをこなして。と、小言はここまでにしておこう。ドールの件だが、これはもう手遅れだ。物はいずれ壊れる。その日が、たまたま今日であっただけのこと。放っておけ。物はないが使命は果たしている、既に用済みだ」

「……僕にだって、事情を知る権利はあるはずです。何故、ドールが壊れてしまったのか」


 無感情な喋り方。そういうものに抵抗はない。物心がついた時には既に、そんな喋り方の人物がいたから。けれど、それにも特別な事情があった。

 ドールは人形で、本来感情を持たぬ存在とはいえ、とても人間的であった。それなのに、突然こんなことになってしまうなんて、気にならない訳がない。


「ふん、新米が偉そうに。まぁいい、時間があるから特別に教えてやろう。ドールには、三つの人格がある。一つは、人形の所有者であった人間の少年。一つは、私達と共に封印された下品な男。もう一つは、その人格が結合した結果生まれた新たな人格――これが、お前とも認識のある存在だ。これが突然、姫君の下僕だと現れた時は驚いたよ。全く見も知らぬ人形が、最初からいた体で屋敷に出てきたのだから。しかし、それを姫君は受け入れた。利用価値があるとな。それにしても、結合して生まれた人格は壊れやすいものだ。後で処分しておかねば、何をしでかすか分からない。姫君に害を与えられては困る」


(処分、か。ただ処分するだけなんて勿体ない。有効に活用するべきだ。万が一に備えて)


「なるほど、よく分かりました。かなり詳しく教えて下さって、驚きました」

「これで満足か?」

「ええ。それで、ドールの処分の件で……少し提案があるのですが。アーリヤ様の為にも、戦力は有効に使いたいと思いまして」

「ほう、いいだろう。言ってみろ」

「はい。まず――」

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