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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十三章 決戦
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弟を助けたい

―ジェシー 街 昼―

 その後、俺と選抜者達は合流して急いでコットニー地区へと向かっていた。箒ならそう時間はかからない。最初、彼らは空を埋め尽くす人相の悪い男達と戦おうとしていた。俺がコットニー地区へ行くことを促すと、彼らは怒りを露にした。


『学校が狙われているのに! 俺達がどうにかしねぇと駄目だろっ!』


 真っ先に、ケビンがそう言うとは思わなかった。選抜者としての自覚が、しっかりと芽生えている証拠であった。俺としては、とても嬉しかった。

 けれど、そんなことに喜んでいる時間はなかった。この場を理事長や他の人々に任せ、俺達がコットニー地区に行かねばならない理由を説いた。


『ぶっちゃけ、ここを襲ってくる奴らのレベルはたかが知れてる。理事長とその愉快な仲間達、束になればそれなりの力にはなる先生達がいる。守りつつ、攻撃もせねばならない。守備は理事長が任せて欲しいと言っていた。お前達の力を信用してのことだ。だから、一緒に来て欲しい』


 簡単な説明ではあったが、事情を把握している彼らは理解を示してくれた。


「なんか、大学の方がヤバイってよ!」

「マフィアが暴れまくってるって!」

「最近休講になってるのと関係あるのかしら……」

「あれ? あの服……マギアの選抜者の服じゃねぇ?」

「こんな所で何やってるのかな?」

「まさか逃げてるとか?」

「さあ……」


 箒で上空を颯爽と駆けていると、街の人々のざわめきが自然と耳に入る。勝手なものだ。俺達がどんな思いで箒にまたがっているのかも知らず。


「勝手ですわね」

「いいんです。言いたいように言わせておけば。私達は、私達のやるべきことを果たすんです。最善かつ最良の行いをすれば、汚名は払拭されますよ」


 不快感を滲ませるマリーに、ジョンは呆れ混じりに言った。


「……先生っ!」


 先頭を駆けていたマイケルが驚きを滲ませながら、俺を呼んだ。


「ん?」

「前方に誰か……行く手を塞いでいます!」


(マイケルが邪魔でよく見えねぇ……ん?)


 横に少し移動すると、俺の目にもしっかりと見えた。赤髪の少女と黒髪の女性が宙に浮かんで、俺達の進行方向を塞いでいるのが。どういうつもりなのだろう、外見だけで判断するのは良くないだろうが、もしかしたらアーリヤの手の者の可能性もある。


「ちょ、俺が前行くわ」

「はい」


 順番を入れ替え、待ち構える彼女らの下へ少しずつスピードを落としながら向かった。そして、気付いた。


「あーっ!」

「何アル!?」

「急に大きな声を出さないで欲しいネ!」

「クロエじゃねぇか!」

「ジェシーの知り合い?」

「知り合いも何も、赤髪の方はお前達と同じ学生だ。学年は違うけど。でも、もう一方は知らねぇな」


 彼女達の前で、計算通り箒はとまった。気付くのがもう少し遅かったら、横を通り抜けるか衝突は避けられなかった。


(何故、彼女がここに? 確か、タミに連れ去られたきり……)


「お久しぶり、ジェシー教授。この戦い、私達も参加させて貰うわ。私も、そして美月もコットニー地区にとても大事な用事があるの」


 クロエは選抜者達の警戒も何のそのと、平然と俺達の方に近付く。


「その用事って何? 急に現れて信用なんて出来ない。それに、どうしてこの道を通るって分かったのかしら」


 ベッキーは、いぶかしむ様子で彼女らに問いかける。


「……タミは私の弟。タレンタム・マギア大学で選抜者に選ばれたって聞いてる。だから、貴方達なら知っているでしょう? あの子を助けたい。それが用事。この道にいた理由は、貴方達が一番通る可能性が高いってクロエが言ったから。私達は、貴方達を陥れる為に来た訳ではないの。どうか、お願い。協力させて」


 機械的に喋る黒髪の女性はそう言って、頭を深く下げた。そんな彼女の行動に威圧していた選抜者達も、どうしたものかと困惑して顔を見合わせる。


「構わない。ただし、それ相応のリスクがあることは分かるね? それでもいいのなら、一緒に来るといい」


 すると、彼女は素早く顔を上げて言った。


「ありがとう」

「皆もいいよね?」


 硬直していた彼らだったが、少し経つと優しい笑みを浮かべて頷いた。


「よし! 行くぜ!」


 戦力は多いに越したことはない。それに、感じる。クロエもそうだが、美月の方からも強烈な力を感じる。俺とよく似た龍の力を。


(確かめる余裕はないかもしれないが、龍の力を宿しているなら……間違いなく戦力になる)


 無表情な美月、将来有望なクロエ。彼女らを引き連れ、再びコットニー地区を目指し箒の速度を上げた。

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