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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十三章 決戦
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未熟な支配する力

―コットニー地区 昼―

 息を大きく吸い込んで、広場に響き渡るように僕は言った。


「聞け! 愚民共! 今日ここに宣言する。アーリヤ様の願いを叶える為の聖戦の開幕を! お前達には、その為の駒になって貰う。異存はないな? 当然だろう、この場を支配する私の命令なのだから……」


 僕にしか出来ないこと――それは、酒を摂取したことのある凡庸な者達を操ることだ。どれだけ微量でも、一度でもお酒を摂取していれば、僕の思うがままとなる。普段、どれだけ僕を憎んでいようとも関係ない。僕の言葉が、彼らの意思となるのだから。


「……俺達の真のボスは、貴方様だ。命令に歯向かうなんて、マフィアの名が廃るってもんだぜ」


 親しげに柄の悪い男達が下品な笑みを向ける。


「えぇ、その通り。名誉ある戦いに私共参加させて頂けるとは、身に余る光栄です。何なりとお申し付け下さい」


 スーツを着こなす男は、先ほどまで感じていた恐怖という感情を忘れてしまったかのように僕の前に跪いた。


「フフフフ……ハハハハハハハハハハハ!」


 あまりにも愉快な光景だった。マフィア達に、今まで受けてきた仕打ちを思い出せば当然だ。それなのに、今この瞬間、僕の前に跪いている。未熟であれど強大で圧倒的な力の前に、凡庸な者は無力だということの証明であった。


「ハハハハッ! そうか、フフフ……それは良かった。お前達、今すぐマフィアはタレンタム・マギア大学へ行け。そこで好きなだけ暴れると良い。破壊や殺戮も……どれだけ行っても構わない。出来るな?」

「当ったり前だ!」

「俺達の得意分野って所だぜ?」

「……分かりました。では、ご命令の通りに。行くぞ! お前達、箒の準備だ!」


 彼は立ち上がり、足早に遠くへと向かっていった。


「「おーっ!」」


 それに続くようにして、子分達も続々と走り出した。そんな様子を見ながら、アレンさんは言った。


「凄いなぁ。見事。ここまでとは……でも、どうして今までこの力を使わなかったのさ? 力を使えば、ちょちょいのちょいじゃん? 自分のいいようにするのって」

「表面だけ見れば、この力は魅力的に見えるのかもしれない。だが……この力には偏りがある。酒がなければ、この力は通用しない。準備が不可欠だ。それが、未熟さを見せつけられているようで不快なんだ、私は。けれど、アーリヤ様の為ならば、と決意した」


 他者とは違う力があるだけで、もしかしたら僕は恵まれているのかもしれない。けれど、その力の為に僕がどれほどの苦痛を味わってきたことか、他者には理解しては貰えない。


「へぇ~ま、そのお陰で一気に忠誠心の塊を手に入れた訳だ。感謝するよ」

「その件で、少し疑問がある。これだけの人数、もしかしたらあのチョコを食べていない奴がいるかもしれない。もし、そうだとしたら――」

「全然問題ない。だって、一々皆が食べてるの確認してたら時間かかっちゃうでしょ? 楽にざっくり戦力が確保出来ればそれでいいのさ。集団心理的なものも、それなりに作用してくれるだろうしさ」

「なる……ほど」


 その通りだ。一人ずつ食べている姿を確認していたりしたら、その間に向こうの準備も整ってしまうかもしれない。時間がないのに、細かくやっている場合ではないということ。このやり方が、最も効率的だったのだ。


「さて、次はカラスの皆さんによろしく」


 アレンさんは華麗に一度回って、ウィンクを決めた。


(この行動に意味はあるのか?)


 たまに、分からなくなる。この人の行動と言葉の真意が。


「……言われなくても、分かっている。さぁ、聞け! カラス共――」

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