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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十二章 目覚め
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眩む世界の中で

―ジェシー 学校 朝―

「――う゛っ!」


 職員会議真っ只中の最中、突然それは起こった。ぐにゃりと世界が歪み、鈍痛が俺を襲った。思わず、手に持っていたマグカップを落としてしまった。


「あららぁ? 大丈夫ですかぁ?」

「あ、嗚呼……申し訳ない。折角、アーナ先生に淹れて貰った紅茶なのに……」


 散らばったマグカップの破片と、絨毯に染み込んでいく紅茶。事はもう過ぎてしまったので、それを見守ることしか出来なかったが、心惜しい。


「顔が真っ青じゃが……急に体調でも悪うなったのかの?」


 朗らかな声で、臼村教授が俺を心配する。


「い、いや……そんなんじゃ……」

「手も震えている。そんな様子で、何事もないと言い切れると思っているのか?」


 キャンベル学長が、怪訝そうな声で指摘する。無論自覚していた、隠し切れていないと。それほど、急激で突然で強烈なものだったのだ。


(息が苦しい……まさか、これはっ!)


 体調不良にしては様子がおかしい。それに、以前にもこんな経験があった。それと全く同じの症状。そう、アーリヤが現れて、力を広げていった時と――。


「やはり、連日選抜者達を指導なさっていることが、体に響いているのでは……?」

「それに、私……昨日の夜中見ました。先生が魔法の練習なさっている所……結構長い時間。もしかして、こんな状況になってからずっと……」

「こんな所で倒れていたら、話になりませんぜ。先生が頼りなんですから、寝る時はしっかり寝ないと」


 見当違いも甚だしい。彼らは何も知らないから、無理もないが。


「ハハハ……見られてたのか。隠れてやるタイプだから、恥ずかしいなぁ。全然やってないけど、何か出来た~って言えないじゃんか~う゛っ!」


 こんな形で注目されるのは嫌だった。誤魔化そうとしたのだが、絶え間なく襲ってくる苦痛は堪え切れなかった。


「無理しない方がいいと思いますよぉ。どうせ、こんな会議に大した意味なんてないじゃあないですかぁ」

「そんなことは……あるかものぉ。ホホホホ!」


 俺は焦っていた。このままでは、奴らに絶対に勝てないと。龍としての力を取り戻せないのなら、俺や皆の人間としての力を引き出すしかないと。僅かな可能性に賭けていたのだが、この様。つまり、間に合わなかったということ。


「そうだな……ハハハ。無理は全くしてないけど、今日だけは調子が滅茶苦茶悪いみたいだから、もう休むわ。会議勝手にやってて。じゃ、また明日……」


 俺は力を振り絞って、立ち上がる。

 この状況だ。こんな所で、時間を無駄にしている場合ではない。選抜者やあいつに伝えに行かなければ。もう、やるしかないのだということを。敵を討ちにいくしかないということを。俺の力が取り戻されるのを待っていたら、その間に世界が滅茶苦茶にされてしまう。何としても、それだけは避けなくてはならない。


「頼んだぜ、学長さん……」


 俺は学長にウィンクとポーズを決めた後、眩む世界の中、俺は壁を頼りにしながら皆のいる場所を目指して歩き続けた。

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