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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第二十一章 反目
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約束を守らせて

―ジェシー 学校 昼―

 ジョンから、邪悪な気が発せられ始めたのだ。


(嗚呼、なんてことだ。ジョンは完全に毒されている。あのアーリヤの力に)


「こ、これは何アル!?」

「紫色のオーラをまとって……危険な気しかしないネ」

「これってヤベェんじゃね……?」


 彼の露骨な変わりように、リアムを除いた全員が怯えた様子で後退りする。


(この場にいる奴らは、ジョン以外は全員大丈夫みたいだな。だが……)


 向こうに行った連中のことが心配だ。特にメアリー。一番気に病んだ様子だった。それに、アーリヤの力を使いこなすタミと関わった内の一人。毒されていてもおかしくない。現に、そのタミと関わったジョンがこうなってしまっているのだから。


「離れろ! 今のこいつは……負の感情に支配されている。下手に近付くと、お前達も危ない」


 かつて、俺はこの力を前に屈した。本来の体も失い、威厳も奪われた。あの状況をどうにか出来るのは、俺しかいなかったのに。

 でも、あの時とは違う。例え、この体であっても今の俺なら絶対に解決出来る。俺は、自分を強く信じている。あの時と違う行動を起こせれば、結果も違うはずだ。


「それって……まさか、彼女の――」

「知っているんだな、アリア」


 彼を見るアリアの酷く怯える薄い紫色の目。彼女を最初見た時から、俺は正体に気が付いている。多分、向こうも察している。けれど、今はお互いにお互いの人間としての生活がある。


「え、えぇ……勿論」

「なら、こいつらを避難させてくれねぇか。こういう場合は一対一の方がやりやすい」

「はい、分かりました」


 俺がそう尋ねると、表情を引き締めてアリアは力強く大きく一度頷いた。普段は頼りない彼女、だが今この瞬間はどこかたくましく見えた。こんな表情が出来るのだと思った。


「そんな! 私達だって戦えますわ!」


 マリーは、避難を促されたことが不満だったようだ。


(お前には自信がある。名家としての、選抜者としての……実力だってある。だけど、マリー……まだ、お前では力不足だ)


「いいから黙って、俺の言うことを聞いてくれ!」


 俺は焦っていた。ジョンの発する気が増大している。ここで実力がどうなの何だのという話をすることは、危険だ。


「俺に約束を守らせてくれ!」


 俺に言えるのはそれだけだった。俺は、皆を守りたい。教師として、学生と学校を守りたい。気が付いたら、宝物になっていた、学生達の笑顔の為。


「先生……」


 必死な思い、それが幸いにもマリーや他の者達にも伝わったようだった。


「今の俺には、全員を傷付けず守れる力がない。だから、分かって欲しい。俺が未熟だから、お前達にはここから去って欲しいんだ」

「はぁ、しゃーねぇな……正直、こいつと話してても、らち明かねぇし。先生が解決してくれるんなら、もう任せるわ」

「すまん」


 アリアはそれを確認してから、皆に声をかける。


「行きましょう。ここは、ジェシー教授にお任せして」

「分かったアル」

「急ぐネ! ほら、リアムもボーッとしてないで!」


 メイが、佇むリアムの腕を掴んで引きずっていく。

 巽と戦わねばならない事実を知ってから、リアムの落ち込み加減は増した。心ここに在らずといった状況だ。機械的に来て、何もせずに帰っていく――普段を知っているから、余計に心配だ。


「これでもう言い訳は出来ねぇな……さ、ジョン! いくらでもぶつかってきやがれ!」


 俺はジョンに向かって、両手を広げた。

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