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黒い羽に乗せて

―自室 朝―

 僕は一人、ベットに腰かけて自身の弱さを嘆いていた。


(どうしてあの時、咄嗟に反応出来なかったんだ……何の為の今までだ。何も生かせてないじゃないか、僕はまるで駄目だ。あの女性は強いんだ、でも、強い相手に勝てなきゃ意味がない。僕は弱い……弱過ぎる。こんな僕が、調子に乗っちゃいけないことくらい分かってる。だけど、そうでもしなきゃ僕は何も知れない。彼女は何か知ってる。知ってるなら、無理矢理でも吐かせなきゃいけなかったじゃないか。なのに、何も出来ずに……こんな呑気に寝てたなんて……)


 ベットの上で目を覚ますと、既に次の日を迎えていた。僕はあの女性達によって、ここに運び込まれていたようだった。その証拠に、見せつけるように黒い羽が僕の手には握らされていた。

 そして、目覚めてすぐ目に入る天井には真っ黒な手紙が貼ってあった。まさか、と思いそれを剥がし内容を確認すると、真っ黒な便箋には白文字で


『何も知らなくていい』


 と書いてあった。


 しかし、この手紙がこの部屋の天井あることに僕は強い違和感を感じた。ここを守っているのは、この国の王から命令された者達のはずだ。それなのに、あんな不審者を門番達は受け入れたということだろうか。あの監視役の少女が、カラスか否かは不明だが仲間なのは間違いない。

 この国や他の鳥族達から排除されている者達が、どうして簡単に僕をここに運ぶことが出来たのか。あの少女に至っては、何故監視役をすることが出来ているのか。


(せめて運ばれている時に、起きることが出来ていたなら……! というか、彼女達は正体を隠したとしても明らかな不審者だ。それに、あの少女は間違いなく……僕の監視役だった子だ。どういうことなんだ? 駄目だ、何も分からない。何も!) 


 僕が知ろうとしている真実は、僕を守ろうとしてくれている者達にも関わっていることなのかもしれない。この国において、権利も何もなく差別されている彼らと王族が関係を持っているとしたら――。

 そう考えると、僕が感じている疑問は少し片付く。何らかの理由があって、王族とカラスは関係を持ち、その関係を持っていないカラスは容赦なく殺すが、そうでないカラスは今こうやって平然と生きている。

 あの本にもあった『また彼らの中で成功出来るのも一握りだ』という文章。その成功は、王族と関係を持てることだったとしたらどうなのだろうか。


(駄目だ、話がでか過ぎる! 僕が本当に知りたいのは、忌まわしき技術のことだけなのに。それが僕の国を守る為に必要なことなのに……その真実を知るのに、そんな大きなことが出てくるんだとしたら……こんな弱い僕じゃ何も出来ないっ!)


 もしも、僕に圧倒的な力があれば話は別だ。彼と融合したことで、僕は弱い奴の中では抜きんでることが出来た。だけれども、元々強い人達の足下にすら僕は及ばない。

 だから、そのもしもは果たせない。僕に努力と才能が足りないばかりに。


「何の為に僕は……何の為にっ!」


 僕は、黒い羽を両手で引きちぎった。自身の不甲斐なさへの怒りを乗せて。


「だから言ったじゃん」


 引きちぎったのと同時、部屋のドアからあの赤髪の少女が入ってきた。


「な……」


 ちぎった羽が、両手から舞い落ちる。


「どう……して」

「大体はもう分かってるんでしょ? 可哀想、こんなんじゃ勉強にも身が入らないでしょ? だから、楽にしてあげる」


 そして、少女は僕に手を向けた。


「さ、させてなるものか!」


 彼女は、何かしらの魔法を僕に使おうとしている。きっと、それは僕にとって良くないもの。

 だから、僕はバリアを張る魔法を使った。すると、僕の体全体を覆い隠すように、青色の透明な壁が現れる。


「拳や足では当然巽君には適わない。だけど、魔法でなら私にも勝機はある!」


 瞬間、彼女の手から長い鎖のような物が飛び出した。その攻撃に耐えようと、僕は壁へ送る力を強めた。


「なっ……!」


 しかし、彼女の放った鎖は僕の作った壁にいとも簡単にヒビを入れると、やがて一瞬でそれを破壊した。


「魔法や魔術を生み出す魔法のエネルギーに最も起因するのは、その個人の意志の強さ。こんなことで揺らぐようなら……やっぱり知らない方がいい」


 その鎖は僕に絡みつき、僕を強く縛った。


「やめ……ア゛ウ゛!」


 その鎖は僕を強く締めつけたまま肥大し、やがて僕自身を覆い隠した。

 消えていく目の前の光景、真っ黒に染まっていく視界。締めつけられていることによる体全体への痛み。奪われていく熱、そして――。

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