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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十九章 幼馴染
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友達以上恋人未満

―メアリー 学校 朝―

 目が覚めると、そこは保健室だった。


(……ジョン)


 私がいつも傷付いたら、必ずどんな時でも傍にいてくれるジョンの姿は今日はなかった。ジョンも、彼のせいで酷い目に遭ったから仕方がないのだけれど。


(どうして、あの時……友達だって言ったの? 私は、他の皆と同じなの?)


 目が覚めて、最初に思ったことはそれだった。嫌いな後輩がどうなったのかということや、自分の今の状況の理解すらしたくない。そんなことはどうだって良くなってくる。


(ずっと一緒にいたのに……それでも、私は友達なの? それ以上の関係に私達はなれないの? あの時だって、そうだった――)


 思い出したのは、幼い頃のことだ。随分と昔、もしかしたらジョンは覚えていないかもしれない。だけど、私は鮮明に覚えている――。


 私達は近くに住んでいて、必然的に仲が良くなった。性別とかも関係なく、私達は遊んでいた。幼馴染だった。一緒にご飯を食べたりもしたし、一緒にごっこ遊びだってした。一緒に勉強もしたし、一緒に買い物だってした。他に友達なんていらなかった。ずっと、ジョンの傍にいられるならそれで良かった。

 だけど、成長の過程の中で性別を気にしないという訳にはいかなくなった。周りからも、からかわれたりもした。でも、私は離れなかった。離れられなかった。そこで、私は気付いた。ジョンを幼馴染として、一人の友達として見られなくなっていることに。

 だから、私はその思いを綺麗な夕日が見える場所でジョンに勇気を出して伝えた。なのに――。


『ジョン、私ね……ジョンのこと好き。ずっと一緒にいていい?』

『え、それってどういう……ことですか?』

『そのままの意味だよ。私、ジョンのこと好きなんだ。だから――』

『私は、私は……その結論を今出せません。せめて、大人になってからでいいですか? もう一度、この場所で私から』


 その時、ジョンは私に背を向けていた。どんな表情を浮かべて、どんな思いでそれを言ったのか何一つ汲み取れなかった。

 それからずっと、私は答えを貰える時を待っているのに。いつか、またあの場所に二人で行ける日が来ることを願い続けているのに。


(私はただ……答えが欲しかっただけなのに。答えが欲しいだけなのに。いつまで、こんな気持ちでいたらいいの? いつまで待っていればいいの?)


 私はずっと待っている。私は、彼を幼馴染か友達として見るべきなのか。それとも、今のように一人の男として見てもいいのか――ただ待っている。どちらでも受け入れるつもりだ。その覚悟は出来ているのに、彼はいつになったらその覚悟を決めてくれるのだろう。

 不安で不安でたまらない。私は、このままの気持ちではあの後輩と戦えない。ジョンと協力するなんて出来ない。あの後輩のせいだ。あの言葉のせいだ。


(ジョンの中で私は――)


「お、起きたか。皆も心配してっぜ」


 ベットの上で葛藤していると、保健室のドアが開いた。そこには、ジェシー教授が立っていた。


「教授……」

「お前ら、朝早く来過ぎなんだよな。まぁ、なんだ? 滅茶苦茶タイミング悪かったってこった。今日からは事前準備も終わって、いよいよ集団生活になるし……あんまり気負い過ぎんなよな」


(気負うな……か。出来れば、そうしたいけど)


 私はそれほど強くない。こんな気持ちを抱えたままでは、私は――。

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