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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十八章 惟う者
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嘲笑う夕日

―コットニー地区 夕方―

 真っ赤な夕日が、僕を嘲笑いながら沈んでいくように見えた。

 情けない、こんな自分が嫌だ。何も考えずにいられたら、ドールの言うように出来たのなら……苦しい思いをせずに済んだのかもしれないのに。


「――どうしたんですの? そんな所で座っていては、折角の服が汚れてしまいますわ」


 座り込む僕の背後から、優しい声が聞こえた。


「ドール……?」

「大丈夫ですわ」


 そして、彼女はふんわりと僕を抱き締め、耳元で囁く。


「あの親子のことが気になるのでしょう?」

「っ!? 何故分かる?」

「アーリヤ様にはお見通しですもの。貴方の感情も考えていることも、全て」

「そう……か」


 僕のくだらなさも情けなさも、何もかも見透かされている。このままでは、いずれアーリヤ様にですら見放されてしまうのではないか。僕が不甲斐ないばかりに。


「そんなに辛い思いをするのなら、何も考えなければ良いのですわ」

「簡単に言ってくれるね。生きている限り、心がある限り……考えることをやめることは出来ないんだ。考えることを簡単にやめられるのなら、僕はやめたい! 邪魔で邪魔で仕方がない、でも僕には出来ない!」

「……そうですのね」


 彼女は、あまり納得し切れていないような声色だった。彼女の基準と大半の基準は圧倒的に異なる。元々、感情を持たない存在であると言われていた。つまり、彼女は名前の通り人形。だから、簡単にそんなことを言ってのける。

 今の彼女が感情を持っているのは、恐らくアーリヤ様の力の加護があるからこそだろう。だから、こんな風に温もりだって感じる。僕と同じように、彼女も何かしらの欲望を持っていた。それが、本来感情を持たぬ彼女自身のものであったかは不明だが。


「なら、そのモヤモヤとした感情を解決するしかないですわ」

「解決?」

「えぇ、あの親子をキングが助ければいいのです。ただ、それだけの単純なことですわ」

「でも、そんなことをしたら……」


 きっと、アーリヤ様は失望する。本来ゴミ以下の存在であるカラスを手助けするなど、許されざる行為なのではないかと僕は思ったから。


「アーリヤ様は貴方がカラス達のせいで苦しんでいることで、心を痛めていらっしゃいますわ。これは、アーリヤ様からの命令ですわ。その親子を助けよ……と」

「え!?」

「アーリヤ様はキングのことを心配しているのです。ね……? だから、そんなに思い悩むことなんてないのです。キングはキングの為に……それがアーリヤ様の為にも繋がってくるのですわ」


 ドールはそう言って、僕の髪を優しく撫でた。


「あぁ……うん……」

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