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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十七章 共同戦線
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その汚れを洗い流して

―アーリヤの邸宅 朝―

「やぁ、おはよう。何やら騒がしいと思ったら……エルナのせいか」


 部屋を出てすぐの場所に、アレンさんが壁にもたれかかって待ち構えていた。


「アレン!?」


 エルナとアレンさんは知り合いのようだった。まぁ、彼女もここの住人でアレンさんはここの陰の支配者だった人だ。顔見知りでない方がおかしいだろう。


「久しぶりに会えて嬉しいよ。タミにも気に入られたんだね、良かった。流石は、俺のお気に入り。だけど、タミ……駄目じゃないか」


 彼はエルナを見て顔をほころばせたが、僕に目線を向けると少し険しい表情になった。


「駄目? 何が駄目なんですか?」

「それ、それだよ。その態度と言葉遣い、ちょっと前に教えたことがまるで出来てないじゃないか。部屋の外まで聞こえてたんだけど、それじゃあ駄目でしょ」

「あっ……」


 頭の片隅にはあったけれど、他のことに意識が向き過ぎて忘れていた。


「理想を演じなきゃ。せめて、この場所の……ゴミとゴミ以下の前ではさ。まぁ、もう無理だよねぇ。そういう所、改善しないとアーリヤ様にも見限られちゃうよ?」

「……っ」


(そんなの嫌だ。アーリヤ様にまで見限られたら、僕は……独りぼっち。居場所も、行く当てもどこにもない)


 その恐怖は、自然と僕の体を震えさせた。僕には、もうここ以外の居場所など存在しないのに。それを奪われてしまったら、僕には何一つ残らない。


「ゴミとゴミ以下って誰のことを言ってるのかしら? アレン」

「ん? アハハハハッ! エルナはよく知ってるじゃないか、俺が何度も何度も教えてあげたんだから。それでも、エルナはへこたれなかった。それどころか、さらに反抗的に立ち向かって……殺してしまうのが惜しくなった。でも、エルナはゴミ以下だから。どれだけエルナが足掻いても、それだけは変わらないよ」


 彼は嘲笑うような笑みを浮かべ、ゆっくりとこちら側に歩み寄る。


「だって、エルナは選ばれなかったカラスとしてここにいるんだから。人生の敗者なのに、俺らと対等になれる訳がない。ここから逃れることすら出来ていない時点で……ゴミ以下なんだよ」

「……ハッ」


 徹底的に見下し切ったアレンさんの発言に、彼女のことだから怒るものだと思っていた。けれど、その予想に反して彼女はただ小さく嗤っただけだった。


「さて、話は戻るけど……タミ、もうエルナの前では演じる必要はないよ。だって、ありのままの君を知ってしまっている訳だしさ。演じたってしょうがないよね」

「はい……」


 僕は、なんて駄目な奴なのだろう。心に決めたことすら出来ないなんて。表情では、悟ることは出来ないががきっと彼は呆れている。


「そういえば、体を綺麗にしたかったんだよね? がっつり聞こえてたからさ。まぁ、確かにエルナがそのままの格好でここにいるのは不快だな。どうせ、その血ゴミのでしょ? 汚らわしい。うん、特別にお風呂を使わせてあげよう。ここの廊下を突き当たり、真っ直ぐ行ってごらん。そこに大浴場があるからさ。その汚れを洗い流しておいでよ」

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